第2章 乗り越えた先に_
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目の前には、俺を見つめる山下
その瞳の奥は揺れている
なぁ、お前の瞳に映ってるのは誰だ?
俺か?
近藤学生か?
「…そういうお前こそ…どうなんだよ」
『ッ!…は?』
「っ…お前こそ近藤学生の事が好きなんだろ?
最近、ずっと話してるもんな!」
違う、こんな事を言うつもりなんてないんだ
けど…だけど…
山下が近藤学生と話している時の顔
あんな表情、俺に見せた事はなかった
というか、見た事がなかった
俺の言葉にみるみる顔色が変わってき、何か言いたげな表情をしたがら視線を逸らした
『っ…違っ!…っ…それは…』
「あ?何が違うんだ?
好きなんだろ?」
認めろよ
認めたら認めたらで苦しいが、聞かずにはいられなかった
けれど、こいつは再び俺の方を見た
『っ…今は…勇美は関係ないでしょ!!』
「ッ!勇美…だと?」
不意に、眉間にシワが寄る
本人は気付いてないようだがこいつは確かに今、名前で呼んだ
“近藤勇美”
近藤学生のフルネームだ
『ぁ…!いや…違うの…これは…その…』
俺の顔を見て、ようやく自分が言った事の重大さに気付いたらしい
「…そうかよ…。名前呼びするまで仲良くなったって訳か」
『だから違うって!』
必死に弁解してる山下を見てイライラした
なにが違うんだよ
名前で呼んで時間があれば近藤学生と話してたもんな
俺が見た時は少なくとも
「楽しそうに話してたもんな
良かったじゃねぇか、お似合いだぞ」
「ッ!」
つくづく、俺は性格が悪いらしい
山下の顔にも怒りが見えた
俺を見る瞳が変わっていく
『っ…いて…』
「あ?」
『っ…最低!!
坂木なんてもう知らない!
大っ嫌いっ!!』
そのまま俺は押し退けられた
「ッ!おい、待て!」
咄嗟に呼んだが、聞こえてないのか聞こえてない振りをしてるのか
そのままミーティング室を出ていってしまった
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