第1章 これはきっと何かの間違い_
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山下が出ていってから30分程が経った
チラッと腕時計を見た時だった
戻りました!という声がし近藤学生が入ってきた
手にはペットボトルを持っていた
「近藤学生、どうしたんだ、それ」
俺らしくもなく、気付けばそんな事を聞いていた
別に、どうだっていいだろう
喉が乾いたから自分で買ったんだ
きっとそうだ
「あ、これですか?
あn…っ…山下先輩に買って貰って…」
その瞬間、さっきの考えがどうでも良くなった
「あぁ?山下がてめぇに奢ったのか?」
「ぁ、はい…」
「用もなくか?」
「いや…用っていうか…その…まぁ…」
そう言って、口を濁す近藤学生
なんだ、言いたい事があるならハッキリ言え
「話してる時に奢ってもらったって感じです」
「……」
「それが何か…?」
そう言われ、俺はそれ以上何も言えなかった
おい
らしくねぇぞ
何を焦ってんだ、俺は
急に呼び出した礼だろう
奢るのはそんなにおかしい事ではない
だが、しかしだ
先程の事といいあいつはなんでこいつを気にかけてるんだ?
勉強が出来るからか?
顔か?身長か?
何か共通の話題があったのか?
分からねぇ…
もしかして、好きなのか?
そんな事を机に向かいながら悶々と考えていると、カタンと机の角にペットボトルが置かれた
「…ぁ?」
「姉ち…ぁ…山下先輩からの伝言です
この間はありがとう。と…」
それだけ言って近藤学生は自分の机に向かっていった
「……」
これは俺の好きな清涼飲料水だ
律儀にキャップ部分に変なキャラクターまで書いてある
なんだ、こいつ
あいつのイメージキャラクターか?
「ハッ…」
近藤学生を目で追いながら蓋を開ける
口をつけると少しぬるかったがまぁ、いいだろう
「良かったな、坂木」
笑いながらそんな事を言ってる西脇に親指を立てると俺は再び、本に目を落とした
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