第1章 これはきっと何かの間違い_
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『そっか…』
私なんか貧乏な家に少しでも負担が減るようにと、曖昧な理由で防大に入ったのに勇美はそこまで考えてたとは…
勇美、やるな?
お姉ちゃんは鼻が高いぞ
やっぱり、兄弟って事を皆に知らせても…
「それに…手当が貰えるから家にも入れれるし…
あ、姉ちゃん!
俺、対番の先輩に沢山奢ってもらって__」
『……』
前言撤回___。
『ま、まぁ、私も最初それが志望理由だったから何とも言えない…』
目の前にある自販機に向かいながらそう言うと笑ってる勇美
「あ、それと、母ちゃん、店を畳むらしい」
ジュースを渡すと思い出したかのようにそう言う勇美
『そっか。残念だね…』
父が死んでからずっと続けていた山下食堂だがあまり儲からず、三人の子を養うにはとても無理があった
そこで、私は負担を減らす為に、防大に入学したがその2年後母が再婚したと聞いた
今は、母、妹、そして勇美は父方の性、近藤という苗字になっているらしい
私も同じ、“近藤”になってもいいのだが手続き等もめんどくさいし、何より、名札を一から作り直すのも嫌なのでそのままにしてた
食堂は続けていたらしいが遂に畳んじゃうのか
『それにしても、あんたまで防大に来るとは思わなかったわ』
「兄弟揃って、防大とか凄くないか?」
久しぶりに会った為、会話に花を咲かせる
「俺、そろそろ戻らないと…!」
そう言って立ち上がる勇美
それを見ながら私は声をかけた
『…勇美』
「なに?」
『…頑張りなよ』
“頑張りなよ”
その言葉には二つの意味があった
一つはそのまんまの意味
これから、頑張れと姉として応援してるのだ
そして、もう一つはこれからに関して
入校式が終わると同時にお客様期間は終了する
その日からは地獄の日々が始まる為、ついていけず辞める学生が多くいる
だが、そんな言葉の意味も考えず勇美は“おう!”と返事し駆け足で舍内へと戻って行った。
んー、私も戻るとしますか。
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