第13章 囮捜査って禁止されてるよね
「連続殺傷事件?」
「そうでィ。それも、カップルばかり」
呆れた様子で肩をすくめる沖田に、遼は首を傾げる。
「でもそれ、真選組(ウチ)の管轄じゃないですよね」
真選組はいわゆる対テロ部隊である。一般的な「事件」の取扱は大江戸警察が行う筈だ。
「とっつぁんの命令なんだよ」
「私たち暇だと思われてるんですかね?」
顔をひきつらせる遼に、沖田と土方は無言で応える。
「今抱えてる仕事があるんで、私はこれで…」
直感的に逃げた方が良いと感じた遼は、作り笑顔全開で後ずさりするが、ガシッとその肩を掴まれた。
「久々に書類整理以外の仕事だぁ。嬉しいだろ?」
土方の笑みに、遼は全てを諦めた。
【囮捜査って禁止されてるよね?】
「と、言うわけなの」
万事屋のソファに座った遼は、溜め息を混じりに顛末を語った。
「で、俺らにどうしろってんだよ?」
だるそうに答える銀時に、遼も面倒くさそうに話の続きを口にする。
「囮捜査をする事になったんだけどね、カップル役をするのに人が足りないの。だから、万事屋にって」
「何だソレ?」
「最初は、私と誰かが組んでって話だったんだけど……い、色々あって」
若干目をそらして言う遼に、銀時達は首を傾げる。
「それでねっ!」
詮索されるのが嫌な遼は、怒鳴るようにして話を変えた。
「私の恋人になってほしいの!」
「は?」
「え?」
「遼~言い回し間違えてるアル」
酢昆布をかじりながら、神楽は冷静につっこむ。
「へ?あ、そうか。恋人役ね。役」
「念押されると凹むんですけど…」
ぼそりと愚痴った銀時にも気付かず、遼は「お願いできるかな」と不安げに銀時を見上げる。
「そりゃあ、まぁ…やってやんねー事もねぇけど」
もったいぶった言い方をする銀時に、遼は「報酬はちゃんと払うよ!」と、微笑む。
「そーゆー問題じゃねぇし」
「ちょっともー拗ねないでくださいよ銀さん。どうせ、断る気なんてないんでしょう?」