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銀色の【銀魂長編夢】

第12章 大切な人を失った


「俺のこと餓鬼扱いするんなら、これからは呼び捨てタメ口で話せよ」
「い、いえ、そんな事出来ませんよ」
「子どもなんだったら出来るだろィ?」
「いやいや、流石にそれは……」
「呼べやィ」

ズイ、と攻め寄られ、遼は顔を引き攣らせる。
こうなった沖田は面倒くさくてしつこいのだ。

「わかりました。じゃなくて、わかったよ、沖田くん」
「三十点。やり直し」
「ええっ!?」
「俺の名前、知ってんだろ?」
「……沖田総悟先輩」
「五十点」
「総悟さん」
「六十五点」

微妙にしか上がらない点数に苛立った遼は、半ばヤケクソで叫ぶ。

「わかったよ、総ちゃん!」
「?!」

沖田の目が、こぼれ落ちんばかりに見開かれた。
その呼び方は、ただ一人大切な人だけのものだ。

「え、沖田隊長、どうかしました?」

完全に固まっている沖田に慌てて声を掛けるが、じっとこちらを見てくるだけで、怒っているのか困っているのかわからない。

「あのー」
「もう一回」
「へ?」
「もう一回呼んでみてくれィ」
「あ、え、総ちゃん?」

迫力に押されて思わず名前を呼ぶと、沖田の顔がみるみる赤くなる。

「え?お、沖田隊長?怒ってます??」
「うるせぇ。稽古つけてやるからさっさと食えィ。
それから……二度と「総ちゃん」って呼ぶんじゃねェぞ」
「え、あ、はい」

困惑しながらも頷いた遼に顔を見られないように俯いたままガツガツと食べる沖田の耳は、赤く染まっていた。
様子をうかがっていた山崎はそれに気付き、箸を落とす。
翻弄される沖田を見るなんて、出会ってから初めて見た。
驚きのあまり凝視していると、沖田がぐるりと山崎の方に向く。

『あとで、殺す』

間違いなくそう言った。
口パクだったが、あの目はそう言っている。
震える山崎をよそに、真選組には日常が戻ってきた。
食堂の入口に立ち止まった近藤は、沖田に気付いて目を細める。

「局長、どうされたんですか?」
「ん、いや……何でもないさ」

沖田が変わろうとしている。
近藤や真選組にとって望ましい方向へ。







おわり
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