第12章 大切な人を失った
数週間後。
ミツバの初七日を済ませた屯所内は、いつもの雰囲気を取り戻していた。
けれど沖田だけが、未だ沈んだ表情で日々を過ごしている。
隊士達はそれも当然だと沖田を腫れ物のように扱い、極力距離を置いていた。
その間遼は、真選組を離れて松平片栗虎の下特別任務をこなしており、今日になってやっと解放されたのだ。
「うわっ…久々に帰って来たらすごいことに」
ゴミ屋敷もかくやと言った有り様に、遼は深々と溜め息を吐く。
「あ、お帰り遼ちゃん」
「山崎さん。取り敢えず、このゴミの山はどういう事か説明して頂けます?」
「いや、忙しかったのと、ミツバさんの事でバタバタしてたのが重なって…」
「言い訳は聞きたくありません!今日中に暇な隊士全員で綺麗にして下さい!!」
自分から聞いておいて理不尽な事を言ってのけた遼は、うろたえる山崎にくすりと笑みをもらす。
「夜までに綺麗になってたら、お掃除部隊だけに夕飯作りますよ」
「ホントに!やった、じゃあ頑張るよ!」
ぱあっと表情を輝かせた山崎に、遼は「現金ですね」と苦笑した。
「そりゃそうだよ。随分遼ちゃんのご飯とはご無沙汰だったからね。あ、俺は晩飯ハンバーグが良いな」
「分かりましたハンバーグですね。そういえば、沖田隊長は何処に居るか知ってます?」
「えっ、あっ、うーん…多分部屋かな。あれからずっと、塞ぎ込んでてさ」
言い澱んだ山崎に、遼は「そうですか」と嘆息した。
「あのさ、遼ちゃんが慰めてあげてくれないかな?」
遠慮がちに頼みこむ山崎に、遼は黙りこむ。
銀時から経緯を聞いたとは言え、遼はあくまで部外者だ。
安易に踏み込む事は出来ないし、してはいけない。
沖田の哀しみを推察する事は出来ても、共に嘆く事は出来ない。
「私が余計な事しなくても大丈夫ですよ」
「え?」
「じゃあ買物行ってきます!」
くるりと踵を返した遼は、小走りに沖田の所へ向かった。
勿論、道すがら出会った隊士に夕飯までの清掃を厳命することも忘れない。