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銀色の【銀魂長編夢】

第11章 閑話休題


足手纏いになるくらいなら、自らを犠牲にする覚悟はあるが、それはこんな所ではない。
遼はふっと口元を歪め、自分を拘束する男を挑発するようにくすりと笑った。

「……もたもたしてないで、刺したらどうですか?」
「は?」
「その短刀なら、心臓を正確に突けば、致命傷は与えられますよ。サクッとやって、失血死するまで転がしておけば、いい時間稼ぎになります」

遼の提案に男は瞬間的に怯み、身を固くする。

「ほら、早くしないと、──時間切れになっちゃいますよ」
「どういう……」
「ああやっぱり。ゲームオーバーです」

直後、銀行内から怒声と悲鳴が上がり、強盗犯が雪崩れるように逃げ出してきた。
それを見て、遼を拘束している男の手が緩む。遼は咄嗟に身を屈め、男を足払いで転がすと、起き上がる前に男の胸を踏みつけて短刀を奪った。

「私の手を拘束していなかったのは、マズかったと思いますよ。だって私、あなた達よりずっと強いですから」
「ひっ!」

口元を歪めて見下ろす遼の表情に、男は思わず息を飲む。

「ばっ、化け物っ……!」

男の口から咄嗟に出た単語に、遼は小さく笑って踏みつける足に力を込めた。

「今更気付いても、手遅れです。ああそうだ、化け物には慈悲も、憐憫も無いので悪しからず」
「うわぁぁぁぁっっ!」

悲鳴を上げ、泡を吹いて気絶した男を見下ろしながら、遼は短く嘆息する。
沸騰しかけていた血液が、すうっと下がっていく感覚に眩暈を覚え、額に手を当てた。

「まだまだ修行が足りないな……」
「遼ーーっ!!」
「うわっ!かっ、神楽ちゃん!?」
「遼、大丈夫アルか?!」

飛びついてきた神楽の心配そうな視線に、遼は張り詰めていた緊張感から解放され、ふにゃりと笑った。

「心配かけてごめんね。見た目程傷は深くないし、このくらいでへこたれてたら、また副長にどやされちゃうよ」

安心させようと思っての一言だったのだが、明らかに顔を顰めた神楽に、遼は首を傾げる。

「どうしたの?」

遼の問いに、神楽もどのように言葉にしていいのかわからず、ぎゅっと拳を握り込んだ。
もどかしさに、神楽は遼を抱きしめる。

「神楽ちゃん……ごめんね」
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