第11章 閑話休題
非番だからといって気を抜くと碌な事にならない。
【閑話休題】
久しぶりの休暇に少しだけ寝坊した遼は、朝食もそこそこに身支度をして屯所に向かった。
昨晩は疲れ果てて自宅に戻った為、持ち帰る予定だった荷物を副長室に置きっぱなしにしている。
「この間叱られたばっかりなのに」
今日は隊服ではなく着物姿の為、急ぐにしても走るわけにはいかず遼はもどかしげに早足で屯所に駆け込んだ。
「おはようございまーす」
「あれ、遼ちゃん今日は非番じゃなかったっけ?」
「山崎さん、お疲れさまです。ちょっと、忘れ物を取りに来まして。副長はお部屋ですか?」
「いや、局長室で会議中だと思うよ。今朝方攘夷浪士の予告状が大江戸警察に届いて、大江戸デパートを爆発するとか何とか」
やれやれと溜息をつく山崎に、遼は「お疲れさまです」と労いの言葉を掛けてから副長室に向かうと、会議を終えたらしき近藤たちに遭遇し、慌てて頭を下げる。
「お疲れさまです」
「あれ、遼ちゃん?
今日は非番だって聞いてたけど、何か有ったのかい?」
「いえ、あの……ちょっと用事が」
土方の顔色を窺いながら、遼はへらっと笑って誤魔化した。
「どうせ俺の部屋に置いてある荷物でも取りに来たんだろ。なぁ、神武?」
「うっ」
「いつまでも人の部屋占有しやがって」
「だから、今日取りに来たんですって。ちょっとくらいいいじゃないですか」
「遼ちゃん、何を置いてたんだ?」
「えっと、お薬、指南書、医学書、着替えの予備、それから……」
指折り数える遼に、近藤は「随分な大荷物だなぁ」と苦笑する。
「色々と調べていたら増えてしまって……」
「だけど、持って帰るのも大変だろう。俺の部屋で良かったら置きっ放しでも構わんが」
「いいんですか!」
「駄目に決まってんだろ。近藤さん、コイツを甘やかさねぇでくれ。すぐに調子にのる」
表情を輝かせた遼の頭をコツンと小突き、近藤を嗜める。
「相変わらずトシは遼ちゃんに厳しいなぁ」
ガハハと笑う近藤に、遼は内心「もっと言ってくれないか」と思いつつ、土方を盗み見た。
「何だよ?」
「いえっ!何でもありません!」