• テキストサイズ

銀色の【銀魂長編夢】

第10章 真選組の仕事


手を引いて縁側に座らせると、土方の頭にそっと触れる。

「何をどうしたら、こんな怪我が出来るんですか?」
「……間留井デパートの自動ドアにはさまった」
「重症ですね」

土方の矜持を汲み取り、それ以上は聞かず傷口の様子を確かめると消毒液を染みこませた手拭いで顔についた血の跡を拭った。
たちまちに赤黒く染まる手拭いに、遼の手が一瞬止まる。
不思議に思った土方が顔を上げると、泣き出しそうな顔をした遼と目があった。

「あまり無茶はなさらないで下さい。あなたは真選組の要なんですから」
「──俺が無茶しなけりゃ、誰がするんだ」
「私たち隊士です。ああ、動かないで下さい、傷口が開きますよ」
「随分手当に慣れてるな」
「簡単な治療くらい出来ないと、一人で生きてはいけませんから」

何でもない事のように言ってのけた遼に、その過去が垣間見えて、土方は手当を続けるその姿を凝視する。
先ほどの木刀を折った腕力や、時折見せる張り詰めた表情、そして、攘夷浪士との繋がり。

「あ゙ーっ、頭クラクラしてきた」
「煙草の吸い過ぎですよ。出血は治まってますから、安静にして下さい」
「わかってるよ」

不承不承頷いた土方に、遼は苦笑しつつ他に目立つ傷が無いかを確認する。
そうこうしていると、山崎が救急隊員を連れて来て、真選組からは土方と沖田が、万事屋からは銀時と神楽が救急車に乗せられて出発した。
それぞれに遼と山崎、新八と妙が付き添った為、残された近藤は原田が運転するパトカーに乗り込む。

「局長がご無事で何よりです。それで、少々お伝えしたい事が」
「何かあったか?」
「神武についてです。今日確認出来たのは、随分耳がいい事と、攘夷浪士への異常執着ですかね」
「そうか。まあ、問題なさそうだな。この事はトシには言うなよ。アイツ、余計な心配するからなぁ」

ガハハと笑う近藤に、原田は苦笑しつつも「承知しました」と答えてパトカーを発進させた。
近藤は流れていく窓の外を眺めながら、長い一日が終わったことにほっとする。

「明日からまた、日常が始まるんだな」

この時の近藤は肝心な事を失念して感傷にふけっていたのだが、それに気付くのは明日以降の話。




──つづく──
/ 119ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp