第10章 真選組の仕事
近藤達の元に走り寄った遼は、満身創痍な様子の彼らに「大丈夫ですか?」と声を掛ける。
「これが大丈夫に見えるのか?」
「見えませんね。救急車呼びますから、おとなしくしてて下さいね」
そう言って携帯電話を取り出した遼を、山崎が慌てて止めた。
「遼ちゃん、救急車は俺が手配するから、副長の手当てしてくれるかな。沖田隊長も、足が折れてるみたいだし」
「はあ……あ、じゃあ、万事屋の三人の救急車もお願いします」
「おーい神武、救急箱借りてきたぞ」
原田から救急箱を受け取り、遼は土方と沖田に目を向ける。
土方は頭から血を流しているし、沖田は折れた右足が痛むのか、いつもより元気が無かった。
「先に沖田隊長の応急処置をするので、座ってもらえますか?」
「オイ、優しくしろよ」
「優しくも何も……あ、副え木が入ってない」
救急箱の中を確認して必要な物が無い事に気付いた遼は、代わりになる物が無いか辺りを見回して、落ちていた木刀を手に取る。
「それじゃあ長過ぎ──」
「こんなものかな?」
まるでチューパットのように容易く木刀を折った遼に、沖田は目を丸くして動きを止め、土方の口からは煙草が落ちた。
「じゃあ、足出して下さい─って、どうかしました?」
「お前、それ……」
「え?」
折った木刀を指差され、遼はそれに気付いて青ざめる。
それは、伝えるつもりの無かった事だ。
「あ、あの、ヒビが入ってて、折れやすくなってたので」
慌てて弁解する遼を、土方と沖田は訝しげに見るが、今は追及するのも億劫で、ただ溜息をついた。
二人の様子から察した遼はばつが悪そうな顔で「すみません」というと、沖田の処置を始める。
「綺麗に折れてますね。これならすぐ治りますよ」
「骨折に綺麗もクソもあるか。ったく」
「文句言う元気があるなら大丈夫ですね」
遼はくすりと笑って沖田の頭を撫でると、土方の手から素早く煙草を奪い取ってポケットから出した灰皿に捨てた。
「怪我をしてる時に煙草は御法度ですよ。血管が収縮して、血栓が出来やすくなりますから」
「医者かテメーは」
「趣味程度の知識ですよ。とりあえず座って下さい。傷を確認しますから。痛かったら言って下さい」