第10章 真選組の仕事
「良かったですね。私が真選組で」
立ち上がった遼は、到着した大江戸警察に「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「原田隊長、山崎さん、見廻りの続きに行きましょう」
「いいのか?」
「何がですか?」
首を傾げる遼に、原田は「いや、何でもない」と嘯く。
「後はぐるっと回って屯所に帰る前に柳生のお屋敷にでも寄ってみるか」
「柳生の?」
「その頃には終わってるかもしれないからね」
「ああ、お妙さんの為に乗り込んでるんでしたね」
「そうそう。じゃあ、ちゃっちゃと回ろうぜ」
その後は市中に異常はなく、三人は見廻りを終えた後、柳生家に向かった。
門の前に立った三人は、ポカンと口を開けて屋敷を見上げる。
「さすが将軍の剣術指南役のお家ですね」
「何か、セレブって感じだな」
「ここに突撃するの嫌なんだけど……完全に場違いって遼ちゃん?!」
がんがん階段を上っていく遼に、山崎は慌てるが、原田は「行くしかねぇよな」とその後を行く。
「えっ、ちょっ、置いてかないで!」
山崎が慌てて追いかけるが、いち早く着いた遼は開きっぱなしの門をくぐって中に入る。
「こんにちはー、真選組でーす。どなたかいらっしゃいませんかー?」
「神武スゲェな、普通この状況で入って行くか?」
「いや、何か……人の気配が一箇所に」
遠慮なく進んで行く遼について行くと、そこには近藤達真選組と万事屋に加え、柳生家の門下生らしき人物らで溢れかえっていた。
だが、事は全て終わった後のようで、各々が複雑な表情をしている。
遼の姿に気付いた銀時が、ふらふらと近付いて来て、遼は慌てて手を差し伸べた。
「大丈夫?」
「何しに来たんだ遼?」
「んー、お迎え?」
「何で疑問形なんだよ。ああ、お前のトコの奴らはもれなくボロボロになってるぞ」
「ボロボロなのは銀ちゃんもでしょ。お疲れさま、大事な物は護れた?」
にこりと笑う遼に、銀時は「うるせー」と言ってがりがりと頭を掻く。
「救急車呼ぶから、ちょっと待っててね」
踵を返して真選組の元に走って行く遼の背中を見つめながら、銀時はぐっと拳を握った。
『大事な物は護れた?』
「そうだな。きっと、護れたんだろうよ」