第10章 真選組の仕事
午前9時 かぶき町
「やっぱりこの時間は人が少ないですねー」
「まあな。でも、不逞浪士なんかが隠れてたりするから気を付けろよ」
「はい」
「最近は過激派も減ってきてるが、桂や高杉みたいな大物がまだのさばってるからな。用心するに超したことはねぇぜ」
「わかりました、原田隊長」
「って何で原田!?俺と一緒に見廻りじゃなかったっけ!?」
ページを跨いだら完全に空気と化していた山崎が慌てて突っ込む。
「いや、流石に監察と二人で見廻りはマズイだろ。戦力的に」
「大丈夫ですよ原田隊長。最悪、山崎さんを置いて逃げるつもりでいます」
「遼ちゃんまで何言ってんの?!」
「やだなあ、山崎さんってば。安心して下さいね、骨は拾いますから」
「いやいや見捨てる気満々じゃないか!!」
慌てる山崎をよそに、遼と原田は「次はあの店に行ってみよう」と、仲良く見廻りを続けている。
「何これもはやデートなんですけど……ん?」
視界の端に動く物を見つけ、山崎は路地裏をのぞき込むが、別段変わった所は見当たらない。
「何か居たと思ったんだけど」
「山崎ー、次行くぞー!」
「あー、うん!」
首を傾げつつ、遼と原田に駆け寄った。
背後を気にする山崎に、遼も首を傾げる。
「山崎さん、何か気になることがありましたか?」
「いや、路地裏で何か動いた気がしたんだよね。見てみたんだけど、何もなくて」
「噂をすれば何とやらだったりしてな」
ガハハと原田が豪快に笑うと、路地裏のゴミ箱が爆発した。
「……」
「………」
「…………爆発した」
ポリバケツの蓋が飛んできて、山崎にクリーンヒットし、突然の爆発音で町は俄に賑やかになり、道行く人達が逃げ惑う。
「原田隊長!」
「先に市民を誘導するぞ」
「はい」
キビキビと指示を出し、状況に対応する原田に従って遼も誘導の補助を行いつつ、駆け付けた大江戸警察に状況を説明する。
「神武、後は大江戸警察に任せて俺たちは攘夷浪士の探索に移るぞ」
「わかりました。って、あれ?山崎さんは?」
「俺ならここだよ!この近くに攘夷浪士の隠れ家を見つけたから行ってみよう」
「山崎お手柄じゃねェか!」
「監察の名は伊達じゃないってね」
自慢げに胸を反らす山崎に案内され、三人は長屋の一角に向かった。