第7章 何でカタカナの名前?
悩んだ結果、遼は素直に頭を下げた。
「申し訳ありませんでした、以降気を付けます!」
余計な事を言うのは得策ではないと判断したのだが、土方は訝しがりながら煙草に火を着ける。
「俺の目には、桂がオマエを庇ってるように見えたんだがな」
「それは……流石のヅ──桂も、女、子どもを巻き込むのに抵抗が有ったのでは?」
元より桂は戦に民間人が巻き込まれるのを嫌っていた。
それは、穏健派として名の通っている今も変わらないだろう。
「ま、奴ならそれも有りそうですねィ」
「チッ、まあいい。次は捕り損なうなよ」
「はい。絶対捕まえて反省させます!」
「何か、私情混じってねぇか?」
図星を突かれ、遼は慌てて首を横に振る。
正直100%私情だ。
「今日は一先ず屯所に戻るぞ。神武、元気なら民間人に負傷者が居ないか確認してこい」
「はい」
遼は辺りを確認し、駆け付けた大江戸警察から情報収集をしてパトカーに戻る。
「現在、重傷者は居ないようです。軽傷者三名は、いずれも爆発音に驚いて転んだ方と飛来物で足を切った方でした。大江戸警察からは、事後処理を言われましたがどうしますか?」
「んなもんアイツらに任せときゃいいだろ」
「では、そのようにお伝えしてきます。あと副長、鼻の頭に煤が付いていますよ」
それだけ告げると遼は踵を返して大江戸警察の指揮官らしき人物へと走って行った。
「へぇ。案外遣える奴じゃないですか。山崎より才能あるんじゃないですかィ?」
「遣いパシリ程度なら、真選組には必要ねぇだろ」
「だとよ、山崎」
「えぇぇっ?!何で俺!?
俺何かしましたか?!」
「何もしてねーからだろ」
突然の不要宣告に慌てる山崎をよそに、土方は煙草をふかしながらせせこましく動く遼の姿を目で追う。
話の運びがうまいのか、大江戸警察相手に和やかな表情をしている。
無骨な男相手だと、愛想の良い若い女性は覿面なのだろう。
小走りで返って着た遼は、「お待たせしました」と言ってパトカーに乗り込んだ。
「皆さん快く引き受けて下さいましたよ」
「色仕掛けでも使ったのかィ?」
「色仕掛け?」
首を傾げた遼に、沖田は「使える色がなかったな」と、溜息をつく。