第2章 再会
「何で疑問形なんだよ。って、一人歩きなんて危ないだろ」
「大丈夫。自分の身くらい守れるから。ほら、ね」
比較的近くに倒れていた男は泡を吹いて倒れており、顔面には殴られたあとが痛々しい。
(おいおい、俺の周りの女はこんなのばっかりかよコノヤロー)
「父さま譲りの武術だもん。大抵の生物は敵じゃないよ」
「お前、生物って…何と戦うつもりだよ」
呆れた銀時が溜息を吐くと、遼は一層強く銀時にしがみつく。その体が震えている気がして、銀時は背中を優しく撫でた。
「まー何だ。元気そうで良かったよ」
「うん。ありがとう銀ちゃん……」
「なあ遼、うちに来るか?」
銀時の問いに、しばし逡巡する。
けれど、答えなど始めから決まっていた。
その為に、江戸に来たのだから。
「……行きたい」
「よし。じゃあ行くか。…っと、その前にコンビニ寄るからな」
銀時がそう告げると、遼は頷いて銀時の後をついて歩いた。
「でも銀ちゃん、私が急にお邪魔しても大丈夫なの?」
「まぁ狭いけど、お前一人増えた所で変わりゃあしねぇよ」
「一人で暮らしてるの?」
「いや。ガキと犬がいる。後、時々眼鏡が」
「子どもって、銀ちゃんの?」
「バカヤロー、んなわけあるか。アレだよアレ。なんつーか、居候兼従業員だよ」
「従業員って、万事屋の?」
「おー……って、何でお前が万事屋の事知ってんだ?」
驚いている銀時に、遼は「ヅラから聞いたの」と、笑って答える。
「ヅラぁ?何だよお前、ヅラと会ったのか」
「うん。それから辰馬と…、」
そこで不自然に言葉が途切れた。
不審に思った銀時が遼の顔を覗き込むと、泣き出す寸前の子どものような表情で彼の名前を呟いた。
それは本当に小さな声だったのに、銀時の耳には痛い位大きな音になって響く。
遼は黙って銀時の左袖を掴むと、少し引っ張って「行こう」と、銀時を促す。
銀時は些か乱暴に頭を掻くと、盛大に溜息を吐く。その事は、今更悩んでも詮ない筈なのに、心は未だに蝕まれている。
「ごめんね…」
「お前が謝るなよ。訣別し切れない俺が情けないんだからよォ」
遼が自己嫌悪に陥っているのを察して、銀時は努めて明るく答えると、遼の頭を優しく撫でた。