第2章 再会
「お前、晩飯食ったか?」
「食べたよ…あ、荷物旅籠に置いたままだ」
「旅籠ぉ?」
「うん。今ここに泊まってるの」
そう言って遼が見せたメモには、江戸一番の高級旅館の名前と部屋番号が記されていた。
「おまっ、こんなトコに泊まる金どうやって…!?」
「地道に働いた報酬で。姐さん達が持たせてくれたお小遣いもあるし」
「は?お前一人っ子の筈だろ?」
疑問符を浮かべる銀時に、遼は苦笑して「姐さんって、妓女の人達の事だよ」と答える。
「妓女ぉ?!」
「そう。私ずっと置き屋で働いてたから」
「はぁあっ!?」
遼のトンデモナイ暴露に、銀時は目を見開いて驚く。
「置き屋ってお前!」
「助平。今絶対エロい事想像したでしょ?」
「うっ…」
「私は「働いてた」の。用心棒として。たまに座敷に上がることはあったけど、お客を取ったことは一度も無いから」
「心配しないで」と笑う遼に、銀時は何とも言えない顔で「そうか」とぎこちなく答えた。
「子供一人で生活するにしても、何かとお金は必要だったから」
「一人って、お前母親と一緒に逃げたんじゃ……っと、悪ぃ」
「謝らなくて良いのに。母様が死んだの知らなかったんだから」
そう言って苦笑する遼の頭を、銀時は些か乱暴に撫でると、優しい声で「頑張ったんだな」と言って微笑む。
「っ……反則だよ、それ」
銀時の優しさに、遼は堪えきれなくなって銀時の胸に飛び込んだ。
「銀ちゃ…っ」
声を殺して涙をこぼす遼をそっと抱きしめる。
暫くして鼻をすする音が聞こえると、銀時は遼の背中を軽く叩いた。
「すっきりしたか?」
「ぐすっ、…うん」
銀時が腕を離すと、遼はゆっくり銀時から離れて赤く腫れた目で笑う。
「ありがとう」
「おー。じゃあ、お前の荷物取りに行くか」
「?」
首を傾げる遼に、銀時はふっと微笑って応える。
「子供が旅籠暮しなんて贅沢すんな。落ち着くまで、うちに泊まっとけ」
「い、いの?」
驚く遼に、銀時は「子供が遠慮すんな」とその手を握って歩き出した。