第2章 再会
銀時はいかにも怠そうに腹の辺りを掻きながら、コンビニまでの道を歩いていた。
「ったく、めんどくせぇ。何でじゃんけんに負けた奴が買い出しなんだよ。高校生のイジメか?」
愚痴を零しても、それを耳にする者はおらず、何かの鳴き声が夜闇にこだまするだけだ。
「はぁ~…ん?」
ふと、路地裏の方に目をやると、男が四、五人固まって下卑た声を上げている。
輪の中心には、小柄な人影ーー。
「おいおいカツアゲかよ…」
銀時は厄介事に巻き込まれるのはごめんだと、見ぬふりをしようとして…失敗した。
厄介事に首を突っ込んでしまうのは、性分なのだ。
「おーい、そこの兄ちゃんよぉ…」
ずかずかと彼等に向かっていくと、突如輪になっていた男達が銀時の方へ吹っ飛んで来た。
「ぬぅおあっ!」
奇声めいた悲鳴を上げて、銀時はそれをギリギリで避ける。
「え?もしかして俺の声で?銀さん唐突にエスパー??」
銀時がわけもわからず立ちすくんでいると、男達に囲まれていた人影が振り返った。
「しつこいわね。誰に喧嘩売ったか教えて…え、あ、銀ちゃん?」
「へ?」
銀時が素っ頓狂な声を上げると、こつこつと足音を立てて人影は銀時に近付いて来た。
「やっぱり、銀ちゃんだ」
嬉しそうに笑った人影は、黒髪に黒い瞳の、美人ではあるが特徴の無い顔立ちの女─寧ろ、少女と言うべきか─だった。
名前を呼ばれたからには知り合いなのだろうが、少女が誰なのか、銀時には全く検討がつかない。
「あー、もしかして…」
「お店の女の子じゃ無いわよ」
銀時は言わんとした言葉を取られ、「うっ」と呻いて半歩下がる。
「相変わらずだね」
にこりと笑った少女のその表情は、確かに銀時の記憶を刺激するのだが、何か大きな矛盾を孕んでいるようで、はっきりとしたものが掴めない。
「やっぱり10年も経つと忘れちゃうよね。ね、銀ちゃんこの傷覚えてる?」
ぐいっと前髪を掻き上げた少女の額には、うっすらと傷痕が浮かんでいて、ようやく銀時の記憶が蘇る。
「なっ、お前まさか、……遼か?!」
「当たりっ!」
少女─遼は、勢いをつけて銀時に飛びつく。銀時は少しよろけたものの、しっかりと抱き留めた。
「久しぶりっ!」
「お前、こんな所で何してんだよ?」
「夜の散歩?」