第7章 何でカタカナの名前?
「エリザベスだ」
何故か自信満々に胸を反らせる桂に、遼は困惑した表情で首を傾げる。
「ね、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。して、どうした?」
「それ…てか、エリザベスって、何?」
「我等が同朋だ」
「聞きたかったのはそういう事じゃない」そう思いながら、遼は「そっか」と苦笑する。
して、何故真選組の遼と攘夷志士の桂が顔を付き合わせているかと言うと、話は二時間ばかり前に遡る。
【何で片仮名の名前?】
晴れやかな朝を迎えた真選組屯所では、天気とは正反対の面持ちで主だった隊士達が集合していた。
「…と、いうわけだ」
「いやいや。局長、アンタまだ何にも話してないですから。文章の世界だからって楽しようとしないで下さい」
「何だよ。『3年Z組銀八先生』のノベルスでは、話進む時こんな感じだったろ?」
「わーっ!そういう事言っちゃ駄目ですって!!」
暴走する近藤の口を塞ぐべく、隊士達は慌てて大声でわめき立てる。
「冗談!冗談ですよねっ!?」
「この作品は集英社並びに作者とは一切関係ありませんからっ!」
フォローする隊士達をよそに、遼は自分の膝を枕にして眠りはじめた沖田を起こそうと必死だ。
「沖田さん、会議始まってますよ。こんな所で寝ないで下さいよ」
「いい枕があるのに、寝ないわけにはいかねぇだろぃ」
「バカな事言ってないで、ホラ、みんな見てますから」
揺すったり鼻をつまんだりしてみるが、どこ吹く風で本格的に寝始める。
「沖田さーん!」
「何やってんだオメェらは」
「あ痛っ」
バシッ、バシッと土方にツッこまれ、遼は後頭部を、沖田は額をおさえた。
「バカな事してねぇで話を聞け」
「ひどい。私はちゃんと聞いてたのに……」
「バカに関わってたんだから同罪だ」
「バカバカバカバカ、土方さん馬にでもなったんですかィ?」
「総悟ォォ!表に出やがれェェ!!」
隊士にはお馴染みのやり取りが始まり、今日も朝礼が長引くぞと皆が覚悟を決める。
「というわけで、今日は皆で攘夷浪士を探す!」
どさくさに紛れてそう叫んだ近藤に、方々から「えーっ」とか「面倒くさい」等の不満が上がるが、「探すったら探すの!」という一言で、各々見廻りに出て行った。