第6章 部屋と隊服と私
「おっ、お、おきっ」
「じゃ、次はこれな」
「は?」
狼狽える遼に、沖田は風呂敷包みを渡す。
「な、何ですかこれ……?」
「ズボン」
「え?」
「だから、隊服のズボン」
遼が恐る恐る包みを開くと、本当に黒の長ズボンが姿を現した。
「見るもん見たし、俺はこれで」
満足げに部屋を出て行く沖田に、すっかり揶揄われていた事に気付いた遼は呆然と立ち尽くす。
「えーっと、遼ちゃん。その、総悟はドS星の王子だからあんな感じなだけで、悪い奴じゃないから。ちょっと言葉と行動に棘が有って、他人が嫌がる姿を見るのが好きなだけだから」
「局長、それ全然フォローになってないです」
「ま、まあ、仲良くしてくれ」
こうして、前途多難な予感しかしない真選組での生活がスタートしたのだった。
<おまけ>
沖田からズボンを受け取った遼が着替えをするため部屋に戻ると、帰って来た土方とかち合った。
「お帰りなさい、副長」
「お前、なんつー格好してんだ」
「え?」
「いくら何でもその格好はまずいだろ」
「へ、あ、うわぁぁっ!着替えてきます!!」
遼は慌てて部屋に飛び込み、残された土方は煙草に火を点けて、ぼそりと「水色か」と呟いた。
<おまけのオマケ>
隊士服に着替えた遼が食堂に向かっていると、サボり中の沖田と遭遇した。
「何でぃ、さっきのは脱いだのか」
「今後も着る予定は有りませんので」
「でもアンタ、裸は見られても平気なんだろ?」
「お風呂とかでの裸はいっそ構わないんですが、隠そうにも隠せない感じが恥ずかしくて……」
「へぇ」
瞬間、遼の背筋に悪寒が走る。
何だか知られてはいけない人に、知られてはいけない事がバレてしまったような気がした。
その予感は、数日後に的中するのだが、これはまた別の話。
──おわり──