第6章 部屋と隊服と私
山崎から殆ど剥ぎ取るように上着を脱がした沖田は、それを遼に投げて寄越す。
遼は上着に袖を通すが、着物の上からでも不格好なのがわかる程サイズが合っていない。
「男物だから仕方ないか。遼ちゃん、悪いけど隊服は暫く待ってくれ」
「はい。お手間を取らせて申し訳ありません」
「いやいや、何分初めての事だから仕方ない。仕立て屋に連絡しておくから、今日にでも採寸に行ってみてくれ。総悟、案内を頼む」
頷いた沖田に「お願いします」と頭を下げると、何故かニヤリと笑われた。
首を傾げつつ隊服を脱いで山崎に隊服を返そうと畳んでいたところ、突如畳んだ隊服が庭に向かって投げ捨てられる。
「ああぁぁぁっ!俺の隊服ぅぅぅっ!」
「じゃ、行くか」
「え?」
驚く間もなく沖田に腕を引かれ、遼はされるがままに引っ張られた。
「あっ、あのっ!」
「何事も善は急げだ」
「いや、急ぐにも限度が……」
あれよという間に玄関まで連れ出され、履物を履くのに手間取っていると「もたくさするな」と叱られる。
理不尽な、と思いながら立ち上がると手を取られて門の外へと出た。
「あ」
「万事屋の旦那じゃねぇですかぃ」
「えーっと、総一郎くんだっけ?」
「総悟です。こんな所で何してるんですかぃ?」
「私たちはなぁ!モゴゴ!」
何か叫ぼうとする神楽の口を押さえつつ、銀時は「散歩だよ散歩」と煩わしげに答える。
「散歩、ねぇ……で、収穫は?」
「そうだな。真選組の隊長が幼気な少女を拐かしてるのに遭遇したくらいだな」
「拐かしなんて人聞きの悪ぃ。コイツは真選組の隊士ですぜ」
「はあ?!」
「正確には、真選組副長見習い補佐でさァ」
「副長補佐見習いだァ?」
「銀ちゃん、ほさって何アルか?」
「あれだよ、あれ。あのー……」
言葉の続かない銀時に、遼は溜息をついて「お手伝いみたいなものだよ」とフォローする。
「遼はお手伝いさんになったアルか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「何でぃ、アンタら知り合いだったのか」
沖田の一言に、遼達の表情が固まった。
それに気付いた沖田の口が、にやりと笑う。
「万事屋の知り合いか。土方さんに知らせたら面白ぇ事になりそうだ」
沖田の様子に、遼は仕方がないと口を開いた。