第6章 部屋と隊服と私
先の入隊試験の後、遼は局長室に案内された。
「とりあえず、遼ちゃんは仮入隊って形になるから。とっつぁんにも話を通さないとならないし、まあ見習いって事で働いてくれ」
「はい。宜しくお願いします」
朗らかに笑う近藤の隣には、煙草を片手に睨みつけるような土方。
そして、何故か遼の隣には沖田が座っている。
「俺としては遼ちゃんの入隊は大歓迎だから、安心してくれ」
「俺としては、テメーには不信感で一杯だから、寝首掻かれないように気を付けろよ」
「あ、俺は近藤さん派なんで」
「はあ」
三者三様の反応に、遼も苦笑いするしかない。
「トシ、負けて悔しいのはわかるが、もうちょっと優しくしてあげないと嫌われるぞ」
「上等だぜ近藤さん。このガキの化けの皮剥いで、アンタに見せてやるよ」
今にも斬りかからんとする土方に、遼も負けずに睨みつける。
その姿は、ハブとシマリス。マングースとチワワ。全く迫力が違う。
その様子を、沖田はニヤニヤと、実に楽しそうに眺めている。
「土方さん、そんなに遼の動向が気になるなら、いっそアンタの手伝いでもさせたらどうですかィ?」
「え?」
「だって、土方さんはコイツを追い出したいんでしょう?傍に置いておけば、監視も出来るし揚げ足も取れる。一石二鳥ってとこでさァ」
流石ドS。
痛い所の突き方を心得ている。
真選組にも、遼にもメリットがあり、デメリットがある配属だ。
「けど総悟、それじゃあ遼ちゃんが大変じゃないか?」
「真選組に入りたいって気骨があるくらいでさァ、多少の任務にも耐えられるんじゃないですかィ?」
「でもなぁ、女の子に危ない橋は渡らせられんよ」
何だか揉め始めた3人に、遼がどう切り出そうか考え倦ねていると、沖田に「アンタはどうしたいんですかィ」と尋ねられる。
「失礼をして、述べさせて頂きます。働かせて頂けるならどんな仕事でも構いません。これでも一応、十過ぎから用心棒のような事を生業にしていましたから、荒事には耐性があります」
「用心棒なんてしてたの!?」
「江戸に出る前の話ですが、真選組入隊を希望した以上、安全な場所に居れるとは考えていません」