第5章 幕府特別武装警察真選組
「あの程度、探せば幾らでもいるだろ。入隊させる程じゃねぇ」
「お前なぁ、一応入隊条件はクリアしたんだぞ」
嫌な流れになりそうだと感じた遼は、声を張り上げてずいっと二人に歩み寄る。
「でしたら、隊長格の方と手合わせを…いえ、仕合いをさせてください!」
「なっ!」
「ほォ…良い根性じゃねェか。だったら俺が相手をしてやる」
遼の申し出に、土方は満足そうに唇を歪ませた。
(何でこの人瞳孔開きっぱなしなの…恐すぎる)
土方の睨みに心中怯えながらも、遼は気丈に睨み返す。それが土方の加虐心を一層駆り立てた。
「いいよな、近藤さん」
「…いいのか、遼ちゃん?」
「はい」
心配そうに見上げてくる近藤に、遼は「無理だと思ったら降参しますから」と、苦笑して答える。
「そんじゃあ、やるか」
「あの、その前にお願いがあります」
隊士から竹刀を受け取った土方に、遼は遠慮がちに申し出る。
「私が勝ったら、無条件で入隊を許可してください。負けた場合、今後一切真選組に関わらないことを誓います。勿論、私が十人斬りをした事も口外しません」
「負ける気はねぇって口振りだな」
「私は絶対、負けません」
遼は竹刀を握る手に力を込め、目を閉じて深呼吸をする。土方は黙ってその様子を見ると、喉の奥で笑った。
それを見ていた沖田が、楽しそうな声で二人に尋ねる。
「勝敗はどうするんでィ?」
「あ、えっと、どうしましょう?」
「どっちかがぶっ倒れる迄で良いだろう。んだ、その不満そうな顔は?」
遼が露骨に嫌そうな顔をしているのに気付いた土方は、睨みを効かせる。
「それだと手加減が出来ないじゃないですか」
「テメェ、俺相手に手加減するつもりだったのか?」
苛立つ土方に、遼は当然だと言わんばかりに頷く。
「だって、手加減しないと死んじゃいますよ」
「はっ、上等だ!」
(ヤバイ!何かスイッチ入っちゃった?)
悪化した状況に、遼はオロオロとした様子で上座の近藤を見やる。
遼の視線に気付いた近藤は、心得たというように瞬きをした。