第4章 依頼
電話を片手に項垂れる近藤に、新八が「どうかしました」と尋ねる。
「上の許可は降りたよ。何か有ったら俺が腹を切れば万事解決だって……」
「良かったアル!」
「ゴリラ一匹の犠牲で済むなんて、理解ある上司で良かったな」
そう言って鼻クソを飛ばす銀時に、近藤はギリギリと歯噛みした。
その時はお前も道連れにしてやると、心に強く決める。
「でも近藤さん、入隊試験ってどんな事をするんですか?」
「その時によって内容はちがうんだが、今回は各隊から隊士を一名選出して十人と試合をしてもらう形になる。それから、履歴書の提出だな」
「で、いつ試験すんだよ?」
「隊士に話を通したとして、最短で……」
「明日だな。よし、明日の昼から試験だ」
話を進める銀時に、近藤は「勝手に決めるな」と突っ込むが、その気になっている面々は話を聞こうともしない。
「明日の昼に真選組にカチコミじゃー!」
「神楽ちゃん、どこでそんな言葉覚えてきたの」
「弁当持って見学に行ってやる」
「あのなぁ万事屋、お前らは絶対に来るなよ」
すっかり遠足気分で盛り上がる万事屋の面々に、呆れた様子で釘を刺す。
「何でだコノヤロー」
「お前ら絡みだとわかったら、それだけで不利だろ。それに、入隊試験に外野を入れるわけにはいかん」
「んだよケチくせーな」
不満たらたらの様子に、見かねた遼が「文句言える立場じゃ無いでしょ」と嗜める。
「局長さん、ご無理を言って申し訳ありません。それから、よろしくお願いします」
「ああ。だが、ウチの隊士は腕利きばかりだ。手加減はさせないから、覚悟してくれ」
「はい」
「じゃあ明日の……11時に真選組の屯所前に来てくれるか。万事屋、お前らは絶対についてくるなよ!」
念押しする近藤に、銀時と神楽は文句を垂れる。
近藤はそれを無視して遼に「また明日」と言って起ち上がり、お妙の方を向いてキメ顔を作った。
「お妙さん、今日はこれで失礼します。貴方の勲は、いつでもどこでも現れますから安心して下さい」
「安心出来ませんね。今日も明日も未来永劫呼んでませんから。来るのはお店だけにして下さいね」
辛辣な言葉を投げつけながらも、揚々と去って行く近藤を見送って、遼は改めてお妙に礼を言う。
「お妙さん、本当にありがとうございます」
「いいのよ。私は報酬さえ貰えれば」