第4章 依頼
金銭の授受に終始したお妙はいっそ清々しい。
遼にとっては、有難い事この上なかった。
「けど、十人斬りなんて、大丈夫なんですか?」
「一応心得はあるし、竹刀なら死ぬこともないから」
「いざとなったらあのゴリラが止めるだろ」
随分あっさりとしている遼と銀時に、新八は何か勝算があるのか尋ねる。
「勝算はないけど、それなりの修羅場はくぐってきたつもりだから」
「修羅場って、嫁姑戦争とかアルか?」
「その修羅場で剣術必要ないよね」
「ま、チンピラ警察程度なら大丈夫だろ。けど、隊長格……特に一番隊隊長なんかは相手にすんなよ」
「どうして?」
「性格最悪だからアル。あんな奴相手にしたら、頭おかしくなるネ!」
心底嫌そうに語る神楽に、遼も「わかったよ」と頷いた。
「とりあえず、目途もたちましたし、良かったらウチの道場で修練でもしていって下さい。姉上、いいですよね」
「ええ、ついでに掃除をしてもらえると助かるわ」
ちゃっかりしているお妙に苦笑しつつ、新八に連れられて道場に向かう。
新八はついでだからと遼と並んで修練をし、銀時と神楽はだらだらとその様子を見て過ごした。
暫く体を動かして満足した遼は、新八から道具を借りて掃除を始める。
「新八くん、色々ありがとう」
「え?」
「お姉さんの事とか、修練の事とか……本当にありがとう」
微笑んだ遼に、新八は数度瞬きをした。
大人っぽい人だと思っていたが、微笑んだその表情は憂いを帯びていて、少しだけ後悔する。
自分がした事は、何かとんでもない過ちだったのではないかと。
「遼~、掃除終わったんなら帰るぞ」
「お腹空いたアル~」
掃除の間ちゃっかり姿を消していた二人が戻り、遼は後片付けをして志村家を後にする。
「銀ちゃん神楽ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとう」
「明日はこっそり見といてやるよ」
「アイツらが何かしたらすぐ乗り込むアル」
「心配しなくても大丈夫だよ。局長さん、とっても優しかったし」
吞気な遼に、銀時と神楽は明日は絶対について行こうと心に決めた。
「ねぇ銀ちゃん、局長さんってちょっと似てるよね」
「似てるって、ゴリラに?」
「違うよ。ゴリラじゃなくて、父さまに」