第4章 依頼
「遼、お前コレ……」
「下卑たやり方だとは思います。けど、どうしても真選組に入隊したいんです」
「そうねぇ……」
お妙は封筒と遼を見比べると、暫く考える。
お金は欲しいが、ゴリラに関わるのは面倒くさい。
やっぱりお金が欲しい。
「会わせてあげる事は出来るけど、保証は出来ないわよ?」
「十分です」
「そう。ちょっと待ってね」
そう言うと、お妙は床の間の薙刀を手に取り、天井を見上げた。
「そこかァァァっ!」
「ギャァァァァッ!!」
掛け声と共に天井を突くと、大きな塊が悲鳴と共に落ちてくる。
驚いた遼が瞬きを繰り返していると、振り返ったお妙が満面の笑顔で「これがゴリラよ」と告げた。
「え?ゴリラ?」
「ええ、正式名称ゴリラ・ゴリラ・ゴリラよ」
「ふっふっふ、気配だけで俺を見つけるなんて、やっぱり俺とお妙さんは運命の……」
「ちょっと、黙ってもらえます?」
踏みつけるお妙に、遼が唖然としていると、銀時が「あれが局長だよ」と指さす。
「え?」
「このゴリラが、真選組の局長だ」
踏みつけられて尚幸せそうな局長に、遼は恐る恐る近付いて声をかける。
「あの、初めまして。神武遼と申します」
「いやお前、よくこの状況で挨拶しようと思ったな」
「だって、みんな驚いてないから、これが普通なのかなって」
「だとしても、挨拶のタイミングじゃねぇだろ」
「近藤さん、さっさと起き上がってもらえます?」
お妙に促され起き上がった近藤に、遼は瞬きを繰り返した。
近藤のその姿は、やはりあの人によく似ている。
喉の奥まで出掛かった言葉を飲み込むと、手をついて頭を下げた。
「改めまして、失礼致します。真選組局長近藤殿にお願いがあり、参上致しました」
「え、俺に?」
顔を上げた遼は、少しだけ微笑んで「はい」と頷く。
「要件のみ申し上げます。私に、真選組入隊の機会をお与え願えないでしょうか」
「ええっ?!入隊希望って、君が?」
目を白黒させて驚く近藤に、黙って聞いていた銀時が横やりを入れる。
「驚いてばっかりで話が進まねーじゃねぇか。おいゴリラ、さくっと終わらせろ」
「いやいやいや、さくっとは無理な議題だろ!流石に学級会開いても誰かが手ぇ上げるテーマだよ!」