第4章 依頼
翌朝、食事を済ませた万事屋一行と遼は、志村家を訪れていた。
「姉上、少しいいですか?」
「どうしたの、新ちゃん。改まって」
「姉上に、紹介したい人がいるんです。今日来ているので、会ってもらえますか?」
朝から神妙な顔をして帰ってきた弟にそう言われ、新八の姉──志村妙は、笑顔のまま硬直する。
「姉上?」
「新ちゃん、もう一度言ってくれるかしら」
「え?ああ、姉上に会わせたい人が──」
「新ちゃん、ちょっと待っててくれる。私、今すぐお赤飯買ってくるから」
「ちょっ、姉上ェ!?」
「何誤解してんだよ。話は最後まで聞けよ」
今にも飛びだそうとするお妙を、銀時が制止した。
「えっ?
新ちゃんが会わせたい人って銀さんなの?
確かに私、そういうのに偏見はないけど、やっぱり弟がっていうのは……」
「ちっげーよ!何でそうなんだ!
つーか、何で俺の周りは話聞かねェ奴ばっかりなんだよ!!」
「姉上、違いますよ。会わせたいのは依頼人なんです。遼さん、どうぞ」
「おじゃまします」
新八に促されて入ってきた遼に、妙は少し驚く。
傍目には普通の少女に見えるが、何故か妙の記憶に引っ掛かった。
「あの、どこかで会った事があるかしら?」
「えっ?」
顔を強張らせた遼に、妙は勿論、銀時や新八も不思議そうに遼の顔を見る。
「姉御、何言ってるアルか。この漫画、顔のパターンなんてそんなに無いから、5人に1人は同じ顔ネ」
「それもそうね。ごめんなさい、えっと」
「あ、神武遼です」
「神武さんね。どうぞ座って。新ちゃん、お茶をお願いね」
遼を挟むように、銀時と神楽も腰を降ろした。
「で、どんなご用件なのかしら?」
「不躾で申し訳ありません。新八くんから、お姉さんが真選組の方とお知り合いだと聞いて……」
そこまで聞いて、妙は合点がいく。
自分をストーカーしている近藤に口利きをしろと言う事だろう。
「別に減るもんじゃねぇだろ。ゴリラ連れて来いよ」
「姉御ォ、遼が無茶する前にお願いアル」
「すみません、ご無理を言って。ですが、依頼として考えて頂けたらと思います」
そう言って、遼は懐から封筒を差し出してお妙の前に置いた。
その厚みに、銀時と神楽がごくりと唾を飲み込む。