第3章 万事屋銀ちゃん
「お風呂アリガトー…って、何か有ったの?」
「何でもねーよ。次、俺入ってくらぁ」
銀時はすれ違いざま遼の額をペチンと叩くいて「髪乾かせよ~」と言い残して去っていく。
「??」
「気にしないで下さい。大した事じゃありませんから」
「そうネ。ただの下ネタアル。つーかあのヤロウ、遼に手ぇあげやがって。ちょっとシメてやるアル」
「おでこ叩かれただけだよ?」
「手をあげた」は大袈裟だと首を傾げる遼を置き去りに、神楽は風呂場にスッ飛んでいく。
「行っちゃった…」
呆気に取られている遼に、新八は「気にしないで下さい」とへらっと笑う。
「あ、そうだ。新八くんに聞きたい事があったの」
「僕に?」
「うん。銀ちゃんや神楽ちゃんだと、偏っちゃいそうだから…」
苦笑する遼に新八が首を傾げると、「真選組の事だから」と肩をすくめる。
「僕も特別良い感情が有るわけでは無いんですが…局長さん…近藤勲って言うんですけど、あの人は僕の姉上のストーカーです」
「は?」
「で、副長の土方十四郎さんは瞳孔開いたマヨラー。一番隊隊長の沖田総悟さんはドSです」
「えーっと…何でそんなにキャラが濃いの?」
「聞く所ソコですか?!
兎に角、悪い人達じゃないんで、まぁ…安心してください」
フォローだかなんだかわからない事を言った新八は、へらっと気の抜けたような笑顔になる。
つられて遼もくすりと笑った。
「何キタネーもん見せてくれてんだこのマダオがぁぁっ!」
「ギャァァッッ!」
神楽の怒声に次いで聞こえた銀時の悲鳴に、遼と新八は驚いて風呂場の方へ目を向ける。
「今の…」
「僕ちょっと見てきます」
すくっと立ち上がった新八は、足速に風呂場へと向かっていく。
「ホントマジで、どんだけ理不尽な仕打ちなんだよ」
倍以上に腫れた頬に氷嚢を当てながら、銀時は神楽を睨めつける。
「うら若き乙女にあんなもん見せたんだから当然ネ」
「テメーが勝手に見たんだろーが!つーかセクハラだぞ!風呂覗きやがって!!」
「それより遼、私がいない間にダメ眼鏡に変な事されたり、思春期特有のいやらしい目で見られたりしなかったアルか?」
「まさか。ずっと、話し相手してくれてたんだよ」