第3章 万事屋銀ちゃん
「昔、大きくなったらお嫁さんにしてってお願いしたじゃない」
「えっ、あーその、何だ…あれがだな…まぁつまり、所謂一つの~」
どもる銀時に、新八と神楽は「呆れた」と言わんばかりに大仰な溜息を吐く。
「覚えてないなら素直に謝ったらどうです?
土下座でもして」
「女に告白させておいて忘れるなんて、一遍死んだ方が良いアルネ。このクソ天パ」
清々しいほど殺意を込めた言葉を、新八と神楽は笑顔で銀時に告げる。
「何年も前の事だろーがっ!んなの一々覚えてられっかっつーの!俺は今を生きてるから良いんだよ過去の事は!」
「逆切れアル」
「本当、みっともないですよね」
「し、新八くんも神楽ちゃんも、そんなにムキにならなくて良いよ。お嫁さんにしてなんて、本気で言ってたわけじゃないし」
「「「………」」」
遼の痛烈な一言に、万事屋三人は揃って固まる。
「何か俺、涙出てきた」
「まぁまぁ。フラれるのはいつもの事ネ」
「そうですよ。それに、銀さんだって忘れてたんですから」
慰めなんだか傷口をえぐってるんだか分からない言葉を二人に掛けられ、銀時は更に落ち込む。
「えーっと…」
何だか収集のつかない事態に陥っているのを感じた遼は、頬を掻いた。
「取り敢えず、今日の所は過去の銀さんを信じましょう」
「仕方ないアル。それより遼はもうお風呂に入ったアルか?」
「まだ、だけど…」
「だったら私と一緒に入るヨ!狭いけど、遼と私なら入れるネ!」
「あの、でも…」
躊躇う遼に、銀時は「後が詰まってるんだからさっさと入ってこい」と二人を促す。
「わかった。じゃあ、一緒に入ろうか」
「キャッホーイッ!男共、覗くんじゃねぇゾ!!」
神楽は銀時と新八を威嚇すると、タオルと寝巻をもって揚々と遼の手を引く。
「わっ、神楽ちゃんちょっと待って」
遼は慌てて着替えの入った鞄をひっ掴み、神楽に引き擦られるようにして風呂場に向かった。
脱衣場に着くなりさっさと服を脱いで風呂に入る神楽の姿に苦笑しつつ、遼もいそいそ服を脱ぐ。
「早く来るアル!」
「うん」