第14章 表と裏(作成中)
「遼、目的は果たせそうか?」
「調べれば調べるほど、迷宮入りしてる。因みに、私が困ってる原因の一つは晋ちゃんだからね」
優雅に煙管をふかす高杉を軽く睨みつけると、空いた手で鼻を摘ままれる。
「んあっ!ちょっ、何するの?」
「俺に喧嘩売ろうなんざ、百年早ぇよ」
「だからって、鼻摘ままないでよ」
「これで少しは鼻が高くなりゃあ良いがな」
意地悪く告げると遼はますます膨れるが、それすらも高杉にとっては愛おしく尊いものだった。
子どもの頃のようにころころ変わる表情も、安心しきっている声も、全てこのままで有ればいいのにと願ってしまう。
「晋ちゃん?」
首を傾げた遼の頭をぽんぽんと撫でた高杉は、腰を上げて不安げな双眸を優しく見返した。
「俺ぁもう、お前の傍には居られねぇが、暫くここに留まってろ。全部終わったら解放してやる」
「大丈夫。勝手に逃げるから心配しないで」
「精々頑張れ。これは餞別代わりだ」
懐から出した小さな包みを渡されて、遼は小さく「ありがとう」と答えると出て行く高杉の背中から目をそらす。
見送ると、決意が鈍ってしまう気がした。
本当はずっと、高杉を想っている。
うっかりすると縋り付いてしまいそうなほどに。
それはきっと、高杉に同情しているという一面もあるのだろう。遼が告げなかった事実や真実には、遼が高杉や銀時、桂の願いや思い、決意を揺るがすものがあった。
「何でもかんでも、知れば良いってものじゃないね……」
高杉や銀時が昔のように喧嘩しながらも穏やかに過ごす日々が来れば良いのにと願いながら、大事なことは秘密にして逃げている。
告げれば変わるのかもしれないが、より混乱を招く可能性もあった。
高杉の気配が完全に遠ざかったのを確認して、遼は渡された包みを開く。
「匂い袋。……うん、晋ちゃんの煙管と同じ匂いだ」
これではますます高杉を忘れられなくなるではないかと、匂い袋を握り締め、中に入った何かに気付いて袋を開いた。
「これ──」
泣き出しそうになるのをぐっと堪え、それを握り締めて袋の中に戻す。
「晋ちゃんの、ばか」
これが発信器や盗聴器を仕掛けるような非情な男なら嫌いになれたのに、と遼は重い溜息をついた。