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銀色の【銀魂長編夢】

第14章 表と裏(作成中)


遼の手は小さく、掴んだはずの物は掌から零れ落ちていった。
何も無い手は、何も掴めない。
どこに居ても、誰と居ても、それは変わらないのだ。

「遼、お前が死ななかったのは、その血のせいか?」
「多分、ね。何せ、三大傭兵部族らしいから。少なくとも、頑丈なのはそのせいだと思う。けど、目とか髪の色に関してはよくわからないんだよね」
「戻らねぇのか?」
「晋ちゃんは、昔の方が好き?」

苦笑しつつ尋ねると、少し悩んだ高杉は乱れた遼の髪を一房掴み指先でさらりと梳いた。

「どんな姿でも、お前はお前だろ」
「ありがとう」

鼻の奥がツンと痛み、泣き出しそうになるのを隠すため、高杉の肩口に額を押し当てる。
触れ合う部分から熱を持っていくようで、遼はこのまま高杉の傍に居ることを躊躇った。
動揺が伝わったのか、高杉は遼を強く抱きしめて一層体を密着させる。

「んっ、苦しいよ」
「離して欲しいか?」
「……意地悪」

高杉の背中に腕を回し、遼は瞬きをして涙の膜を静かに流した。
望めばきっと、高杉は遼を離さずに居てくれる。けれどそれは、全てを諦めてしまう事に他ならなかった。
このまま縋りついてしまわない為に、遼はぽつりぽつりと真選組に至までの経緯を話す。

「父さまは元々水戸藩に──というか、藤田様にお仕えしててね、松陽先生の偵察も兼ねて村塾周辺に派遣されてたの。結局、父さまは松陽先生の事が気に入ったって理由だけで、水戸藩に村塾の調査を終了させた」
「お前の親父らしいな」
「うん。だから後悔していた。松陽先生の為に、もっと何か出来たんじゃないかって」

話すことで気持ちが整理出来ていき、遼は「もう大丈夫」と、高杉からゆっくり離れた。

「父さまが亡くなって、私は母さまと京に上ったんだけど、半年も経たない間に母さまも亡くなって……それからは、晋ちゃんが調べた通りだよ。天人を殺して指名手配された後、藤田様に匿われながら水戸に仕えた。で、今に至るって感じ」
「肝心な事が抜けてるぞ」
「……だから私は、水戸藩を陥れた奴らを探すために真選組に潜入してる」

はっきりと告げた遼に、高杉は口の端を上げる。
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