第14章 表と裏(作成中)
重い瞼をゆっくり開いた遼は、見慣れぬ天井にしばし混乱する。
体は怠く、四肢は縛られたように動かなかった。
理解できたのは、自分が寝台の上に転がされているという事だけだ。
「ん……」
「漸くお目覚めか、眠り姫?」
「晋、ちゃ──っ、ゴホッ」
「丸一日眠った気分はどうだ」
「眠らされた、の間違いでしょ」
不貞た様子で寝転んでいる遼の髪を梳いた高杉は、「情けねぇな」と呟く。
「私を捕らえても、何も出ないよ」
「そうだな。出たのは血液検査の結果だけだ」
その言葉に、遼は驚きに目を見開いた後、軽く下唇を噛んだ。
知られたく無かった事実が、高杉の手の中に落ちてしまった。それは遼にとって、捕らえられた以上の失態だった。
「……私の事を調べて、どうするつもり?」
「俺ァただ、知りたかっただけだよ。お前が何者で、何に怯えているのかを」
「私は、何者でもないよ。今更何も恐くなんてない」
「結局お前を問い詰めねぇことには、どうにもならねぇって事か」
慈しむような指先が頰を滑り、遼は静かに溜息をつく。
これ以上高杉に隠し事をし続けるのは、誰にとっても不利益だ。そう判断した遼は、ゆっくりと上半身を起こす。
「晋ちゃん、ここに座って。全部話すから」
「往生際がいいな」
「だってもう、わかっているんでしょう?」
黙って見つめ合う。
それがどれ程の時間だったのかはわからないが、遼には瞬きほどの一瞬にも、永遠にも感じられた。
「晋ちゃん……ごめんね」
戸惑いながら開いた遼の唇が紡ぐ声は固く震えていて、高杉は抱きしめたくなる衝動を必死で抑える。
「謝られる覚えはねぇんだがな」
「きっと、私が許されたいって思ってるからだよ。黙っていた事も、これから伝えることも」
泣き出す寸前の子どものような表情に、愛しさと憐憫が募り、もっと早くこの時を迎えられて居たならばと後悔した。
「私……やっぱり化物だったみたい。頑丈なのも、髪や目の色が異人に近かったのも、この体に流れる血は、一つじゃないからだった。遠く、遠く昔に人と繋がった天人の子孫──。天人特有の容姿や能力は殆ど無いけど、それでもやっぱり私は人じゃない」
「そうか」
「うん」
再び落ちた沈黙に、遼は握った拳をゆっくり開く。