第14章 表と裏(作成中)
伊東の表情が僅かに驚きを帯びたのに気付いた遼は、余計な事を言ってしまったかと眉間に皺を寄せる。
「兎に角、我流なので型破りなのは見逃していただけると助かります」
「では、手合わせといこうか」
「は?」
「君の実力がどの程度か確認させてもらおう」
そう言って竹刀を構えた伊東に、遼は瞬きを繰り返した。
「何がどうなってそういう事に――っ!」
勢いよく打ち込まれ、遼は間一髪一撃を受け止める。
(見た目よりも力が強い!)
「さあ、君も打ち込んでくると良い。折角だから僕も本気でやらせてもらうよ」
「謹んで遠慮させて頂きます!」
殆ど力ずくで竹刀をはじき返した遼は、伊東から距離を取るためにぴょんと後ろに飛び退いた。
焦りを孕んだ遼の表情に、伊東は口元を歪めると竹刀を構え直す。
「君が来ないというなら、僕からいかせてもらおう!」
「ちょっ、私闘は厳禁ですよ!」
「僕は「手合わせ」だと言ったはずだが?」
間合いに踏み込まれた遼は、ギリと奥歯を噛みしめて竹刀を構え直して次の一撃に備えた。
(来る!)
バシンッ、と竹刀がぶつかる音が道場に響き渡る。
一撃を受け止めた遼は、鍔迫り合いの状態のまま伊東を睨み上げた。
ミシミシと音を立てて竹刀が競り合い、互いに実力を推し量る。
「流石、北斗一刀流の免許皆伝ですね。もうそろそろ、許していただけませんか」
「君が真選組を今すぐ辞めて出て行くというのなら」
「成程…ちょっと飲めそうにない条件ですね」
「そうか。では、出て行かざるを得ないようにしてあげようか」
受け止めた竹刀の重さが増し、遼は膝を折ってどうにか踏ん張るが、伊東は更に力を込めて遼を圧倒した。
(ヤバい。この人は本気だ。だったら私にできるのは…)
腹に力を込めた遼は、漸く本気で伊東の竹刀を押し返す。
「っ!」
「女子供だからって、甘くみないで下さいよ。これでもそれなりに修羅場を潜り抜けてきてるんですから」
「ふっ、だがこの程度で僕に勝てると思わないでくれ」
「勝とうなんて思っていませんよっ!」
勢いをつけて伊東の竹刀を弾き返した遼は、僅かに痺れる手を軽く振って構え直すとにこりと笑った。