第14章 表と裏(作成中)
副長室に着いた遼は、部屋の外から声を掛けて入室の許可を得ると、山崎と共に中へ入る。
「お前ら二人してどうした?」
「私は、副長にお願いがありまして。ちょっと調べ物をさせて頂けないかな、と」
「調べ物?」
「はい。伊東さんが仕入れた武器の中に、良くないルートからの物が有りそうでして」
にこりと笑った遼に、土方は僅かに眉間の皺を深くした。
「確信が有るって顔だな」
「はい。詳しくは言えませんが……単独で調査する許可を頂けないかと」
「いざという時は、お前を切り捨てろって事か?」
「勿論。容赦なくお願いします」
遼の不敵な笑みに、山崎はぎょっとする。ここ最近、遼が真選組に馴染んできていて、表情も豊かになったと思っていたが、これ程ハッキリと意志を示しているのは入隊時以来だ。
遼と山崎の表情を一瞥した土方は、新しい煙草に火を点けると、目を伏せて思案する。
(神武の確信は、恐らく俺が警戒している予感だ。伊東絡みで、真選組を揺るがすような──)
黙って土方の判断を待つ遼は、漂う煙の向こうに彼の姿を浮かべてしまった。
同時に、耳の奥で彼の声が甦る。
思考を断ち切るように頭を振って、背筋をのばした。
どんな目が出たとしても、遼の目的は変わらない。
「神武、山崎、隠密指令だ。神武は武器の仕入れ先の調査を、山崎は伊東の監視を行え。二人とも、報告は逐一、現在より開始とする」
「畏まりました」
「はい」
返事をするなり山崎は早速部屋を出て行き、残された遼は躊躇いつつ口を開いた。
「あの……。副長、今回の件で一つだけお願いがあるのですが」
「何だよ」
「私を切り捨てる際は、速やかに全ての記録を抹消して下さい。自宅の合鍵もお預けしておきますので、宜しくお願い致します」
まるで死地に向かうかのような遼の態度に、土方は呆れた顔で短くなった煙草を灰皿に押し付ける。
「上司に後始末頼むなんざ、見習いが偉くなったもんだな」
「こんな事を頼めるのは、副長しかいませんから。という事で、お願いしますね。髪の毛一つ残しちゃ駄目ですからね」
「掃除くれぇ自分でしていけ」
「わかってますよ」
ふっと笑った遼は、頭を下げて部屋を出た。