第13章 囮捜査って禁止されてるよね
沖田の様子を横目で確認した土方は、自分の右の掌をじっと見つめる。
(たん瘤が、いつまでもあるわきゃねぇよな)
土方が遼の頭に触れたのは、もうずいぶん前の事だ。
その時の感触は、今も覚えている。それ程に、強い違和感があった。
(にしても、アイツも知らなかったのか。しかも神武は、それを隠そうとしてるときた)
何故かそれについて詳らかにするのは躊躇われ、土方はその想いごと胸の奥にしまい込む。
真選組副長としては、正しい行いではないのかもしれないが、まだ少女と言えるほどの年齢の遼が必死に隠そうとしている秘密を無理に聞き出すほど土方も非情ではない。
万事屋とはしゃぐ遼の姿に、その決断が正しいのだと判断した土方は、山崎に捕縛した天人を連れて行くよう指示し、すっかり腐っている沖田に声を掛ける。
「総悟、今すぐついて来りゃぁ始末書は無しにしてやるよ」
「――仕方ねぇから、今日はアンタに従いまさぁ」
万事屋と遼に背を向けた沖田に、土方は煙を吐き出しながら笑みを浮かべた。
その場に残された遼は、去っていく土方たちを見送ると、改めて銀時に確認する。
「銀ちゃん、私も一緒でいいの?」
「三人も四人も一緒だろ。ガキが妙な事で遠慮すんな」
「うん。ありがとう」
「じゃあ行くアル」
遼の手を取った神楽は、やや強引に引っ張って行く。
「あっ、オイ!」
慌てて追いかけようとした銀時を、新八が神妙な声で呼び止めた。
「銀さん、……後で、話したいことがあります」
「何だよ急にマジな顔して」
「多分、大事な話です。でもまずは、みんなで焼き肉を思う存分食べましょうか」
そう言って笑った新八に、何かを察した銀時は「そうだな」と言って新八とともに遼と神楽の後を追う。
銀時のやや後ろを駆けながら、新八は今日一日の事に思いを馳せた。
遼と過ごした時間は、特別なもので、仕事とはいえ新八も十分に楽しく、思い出と言える時間だったと思う。
(遼さんも楽しんでくれていた。けど……少しだけ、秘密を知ってしまった気がする)
懐にしまったプリクラをそっと撫でた新八は、前を行く銀時の背中を見つめて小さく溜息をついた。
――つづく――