第13章 囮捜査って禁止されてるよね
遼は普段丈の短い着物を身に着けない為か、所々に油断がある。
寝転んだせいで着物の裾が僅かにずり上がり、新八の位置からは遼の内股がしっかりと見えた。
白い肌に、不自然なほどの──
(傷痕?
それも、最近のものじゃない)
口もとに手をやって考え込み始めた新八を不思議に思った遼は、身を起こして近付いた。
「新八くん?」
「は、えっ、うわあっ!」
間近にあった遼の顔に驚いた新八は慌てて飛びのき、その場にしりもちをつく。
「だ、大丈夫?」
「え、ええ、すみません」
伸ばされた遼の手を掴み、新八はよいしょと立ち上がった。
立つと遼と見つめ合う形になり、新八は改めて遼の顔を確認する。
いつも大人っぽいと思って見ていた遼は、よく見ると新八の姉であるお妙よりもずっと幼い雰囲気を孕んでいる。
(違う。遼さんは、すごく――)
脆いのだ。
ほんの一瞬でも目を逸らすと消えてしまいそうで、新八はじっと遼の目を見つめた。
そして、違和感に気付く。
「遼さん、目が――」
言いかけた瞬間、遼の携帯電話からゴッド○ァーザー愛のテーマが鳴り響いた。
「あ、沖田さんだ」
「どんな着信音設定してるんですか!?」
「はいもしもし」
『いつまでそんな所でダラダラしてるつもりでい』
不機嫌を隠そうともしない沖田の声に、遼はやや呆れた声で答える。
「まだ十分ほどですよ。一応、一時間はここにいるつもりなんですが」
『メガネが早すぎて、入れる前に終わっちまったって事にでもすりゃあいいだろ』
「……セクハラですよ。とにかく、沖田さん達は外の警戒をお願いします。異常があれば連絡してください」
『あ、おい!』
容赦なく電話を切ると、遼は大きなため息をついた。沖田とは、墓参り以降かなり距離が近くなったのだが、その分セクハラまがいの発言やからかいが増えている。
近藤が沖田を注意しながらも、二人が仲良くなって良かったと喜ぶので、遼も強くは拒絶できないでいた。
「はあっ」
「えーっと、遼さん」
「あ、ごめんね。また何かあったら連絡が来るから、それまでゆっくりしてて」
黙って頷いた新八は、そっと拳を握り締めた。