第2章 越後の香りと安土の香り
翌朝ー。
あさひは、軍議に末席で参加していた。
農作物、商い、緒大名の動き。
様々な議題を、的確な意見と決断で決めていく。
広間は沈香の香りが舞う。
いつも兄貴風をふかせる秀吉と意地悪な光秀。
天の邪鬼な優しい家康、料理上手な明るい政宗。
物腰柔らかな三成と、誰よりも自分を大切にしてくれる信長。
あさひは、目の前で国を動かす武将達の普段とは違う男らしさに、目を奪われていた。
『あさひ、貴様、見惚れるのもいい加減にしろ。』
『はぁ、あんたの視線が気になってしょうがないんだけど。』
『あさひ、どうかしたのか?』
信長、家康、秀吉に、あさひは声をかけられる。
「あ、…なんかみんなかっこいいなって。」
『え?』
頬を赤らめる秀吉。
『はぁ?』
目を丸くする家康。
『やぁーっと気づいたかぁ。』
『何か欲しいものがあるのか?』
にやつく政宗と、意地悪な光秀。
『かっこいいなどと、あさひ様、照れてしまいます。』
いつものエンジェルスマイルの三成。
「私の知ってるみんなも、武将としてのみんなも、かっこいいよ。」
『ふっ、貴様は士気を上げるのが上手い。』
信長も一瞬微笑むと、秀吉の方を向いた。
『ところで、秀吉。』
『はっ。』
『あさひを正室に迎えるために、織田の重鎮や大名たちに披露目をしようと話していた件、どうなった?』
「お披露目?」
『あぁ、古くからの家臣、重鎮、大名にあさひをお披露目して祝言を問題なく挙げられるようにするんだ。披露目の宴に呼ぶ予定の名簿は作りました。あとは、御館様のご判断です。』
『そうか。では、後程、名簿を天守にもってこい。』
『はっ。』
そうして軍議は終わった。
「お披露目、緊張するな…。」
『大丈夫だよ。能天気なあんたなら。笑ってれば大丈夫。』
「家康、そんな簡単じゃないでしょ?」
『俺が旨い飯を作るから、食べて笑ってろ。』
「政宗まで。」
『あさひ、お前は笑っていればいい。
あとは信長様に任せておけ。』
「光秀さん…」
あさひの不安を消すように、それぞれが、
大丈夫だ。
側にいるから。とあさひの肩を抱き、頭を撫でる。
「うん。」
向日葵のような笑顔が戻るのには時間はかからなかった。