第12章 始めの一歩
それは、乱世を生きる新しい一歩
新しい明日への一歩。
また二人に会える時までに、少しでも信長の正室に近づけるようになろう、と決心するのだった。
※※※※※
『泣くなよ、家康。』
『…泣いてません。政宗さんこそ泣かないでください。』
『お互い城に嫁としては…呼べなかったが、まぁ、いい土産になったな。』
政宗は、左腕の腕輪に口付けをした。
『…そうですね。まぁ。またすぐ呼び戻されますよ。喧嘩か、何かに巻き込まれたか。
あさひの事ですから。』
『あぁ、違いない。じゃあな、俺はこっちだ。道中気をつけろよ。』
『はい、政宗さんも。またすぐ会えるでしょうが、どうぞ気をつけて。』
二人は視線を合わせて笑い合い、背をむけ進んでいった。
※※※※※
あさひ、ほんとは青葉城に連れていきたかった。
でも、それじゃ俺の好きな笑顔は曇るんだろうな。
俺は、お前の真っ直ぐで迷わない所に惚れたんだ。
叶わないってわかってても。
心はお前の側に。
必ず祝言の料理は俺がやる。
すぐにまた会えるさ。
それまで、お転婆は直すなよな。
※
あんたは、弱い奴じゃなかった。
芯は強くて熱くて優しい女。
俺の天の邪鬼なところを認めて包んでくれて。
ありがと。
また、どうせすぐ風邪引くんでしょ?
また会えるよね。
はぁ、迷惑。面倒。
でも…
楽しみ。
※※※※※
いつまでも支えていきますよ。
あさひ様の笑顔を守ります。
貴女が安土の太陽だから。
私にとっても、かけがえのない物ですから。
※
俺は兄貴のように、あさひの側で寂しさを埋める。
もう、安土にかけがえのない存在のあさひ。
兄貴以上の気持ちは、出来るだけ押さえて…
御館様の大望をお支えし、そしていつでもあさひが笑える世を俺は作るよ。
※
あさひ、俺の指南は厳しいぞ。
お前を立派な正室にするのが、俺の使命。
これ程までに腕が鳴る仕事はない。
さぁ、鍛えてやろう。
おいで、愛する弟子よ。
※
永久に
永遠に
貴様のすべては俺のもの。
離さない。
いつか、最期の時が来るまで、涙も血も
最後の一滴まで俺のもの。
俺の太陽。いつまでも輝いていろ。
左手の六色腕輪がきらきらと輝いた。
完