第12章 始めの一歩
『お前は、我らの要だな。』
光秀があさひを見て声をかけた。
『貴様が呼べば、家康も政宗もすぐ帰って来るだろうな。』
信長が、ふっと笑い杯を傾けた。
『案外すぐに会えるさ!』
『あんた、落ち着いてないしね。』
「宴とかまたやろうね。」
『それより祝言が先だから。ほんと、あんたは呑気だよね。』
『祝言の料理、考えといてやるから。』
『家康!政宗。祝言の準備にはお前たちの力も必要だ。すぐ戻って来れるように国でも政も頑張れよ。』
『秀吉の言う通りだ。一時帰郷だ。またすぐ呼び戻す。天下統一まで、まだまだやらねばならぬこともある。』
『はっ。』
「じゃあ、私は二人が驚くほどの姫になろう!」
『おっ、言ったな!』
『聞いたからね。』
『頼むぞ、光秀。』
「光秀師匠、宜しくお願いします。」
『ふっ、腕がなるな。信長様、お任せください。』
『あさひ様、光秀師匠と呼んでいるのですか?』
「あ、三成くん。うん、最近ね。」
『では、私も。』
『お前は茶の入れ方から習えよ。』
他愛のない掛け合いが嬉しい。
それが幸せなのだと思う。
笑顔で見送って、また迎えようとあさひは心に決めたのだった。
二人を見送る朝。
あさひは、信長と共に城門に立った。
「寂しく…なりますね。」
『あぁ。だが、二人は心を貴様の側に置いていくだろうな。』
「また、会えますよね。」
『何度も言ったぞ。まだまだ沢山やらねばならぬこともある。すぐに呼び戻す。』
「はい。
…あ、信長様。二人を見送る時に私がする事、見逃してくださいね!」
『…何を考えている?』
「言ったら怒るから言いません。」
『ふぅ。内容によっては、あとで仕置きだからな。』
「えぇ、…わかりましたよ。」
信長とあさひが話していると、後ろから秀吉、光秀、三成が、前からは、旅支度をした家康と政宗がやって来た。
その姿を見ると、あさひは胸が苦しくなる。
『お早いお着きですね。』
『あぁ、秀吉。あさひと二人で話していた。また、何やら企んでいるようだ。』
『また、ですか?』
『俺もお前達も見逃せ、とのことだ。』
「家康、政宗!」
『あぁ、見送りありがとな。』
『ちゃんと来れたんだね。』