第12章 始めの一歩
『政宗、家康。』
信長が声をかける。
『はっ。』
『お前達、祝言までの間、一度国に戻ってよいぞ。』
「えっ…」
『戦も落ち着き、織田軍の膿も出した。一度国に戻り、領地を整えよ。』
「そっか。奥州や駿府。離れ離れになっちゃうね。」
『俺たちがいるだろ?』
『物足りないのか?弟子よ。』
『私たちがお守りいたしますよ。』
秀吉、光秀、三成が声を揃えた。
『そうですね、一度国に戻り整えてもよいかと。』
『ま、それもいいか。』
「また、戻ってくるんだよね?」
『祝言には呼ぶ。それに、何かあれば召集する。』
寂しく曇った表情のあさひを見て、呆れたように信長が声をかけた。
『お二人の喧嘩、とかでは呼ばないでくださいね。』
『甘味が恋しくなったらすぐ呼べ。』
「うん。
家康は、私の典医でしょ? 何でも話せる友達みたいな人だし。
政宗は、私の安心するご飯を用意して満たしてくれて、悪戯好きだけど大事な幼なじみみたい。
二人がいたから、私はここにいるの。
寂しいけど、また会えるよね?」
『あぁ、当たり前だろ?』
『面倒だけど、あんたには敵わない。』
二人は優しく笑い、信長はあさひの頭を撫でた。
※※※※※
二人の出立の日まで、流れるように毎日が過ぎた。
からかわれて、笑いあって、指南を受けて。
あさひは政宗と家康の出立に間に合うように天守で小袖を仕立てた。
信長も、その姿を眺め微笑んでいた。
家康と政宗を労う宴もいつものように、いや、その倍以上に盛り上がった。
あさひの小袖を受け取った家康は、恥ずかしそうに喜んだ。
政宗は抱きつき、また秀吉に小言言われた。
「みんな、腕輪持ってる?」
『ああ、付けてる。』
秀吉の言葉に皆が頷く。
「これがあれば、何処に居ても気持ちは繋がってるね。」
あさひの一言に、皆が各々の色の腕輪に触れた。