第11章 愛でる想い、護る想い
『何を言い出すかと思えば…』
ふふっと笑いながら信長はあさひを見た。
『貴様は我らが愛でるだけの人望がある。その素直さや分け隔てない優しさを、俺たちが必要としているだけだ。』
『あさひ、お前を護るのに理由など必要ない。
護りたいから幸せであってほしいから、護るのだ。』
杯を傾けながら謙信もあさひを見た。
武将たちも、頷きながら優しく見つめる。
「うん、ありがとう。」
ポロポロ涙を流すあさひを愛でながら、からかいながら、宴はいつまでも続き、安土の夜は更けていった。
※※※※※
「次は越後に来い。」
翌日の安土の空は、雲ひとつない快晴だった。
謙信、信玄、幸村、佐助は、旅支度をして城門に向かう。騎馬隊もその後ろについていた。
「はい!必ず。皆様お元気で。ありがとうございました。」
『あさひさん、またね!』
「うん、佐助くん。ありがとう!」
『いつまでも俺は姫の軒猿だから。』
「ふふっ。そうだね。頼もしい。」
『佐助、言うようになったなぁ。』
『佐助、調子に乗るなよ。』
謙信が愛刀に手を添えた。
『こんな所でも戦狂いなんだね。いいから、早く行きなよ。』
家康が呆れたように謙信に言った。
『ふっ。あさひ、苦しく辛くなれば文を寄越せ。すぐに迎えにいく。』
『そうさ、姫。春日山にも花を咲かせてくれ。』
「はい。ありがとうございます。」
『あさひには、幸せと喜びしか与えぬ。未来永劫な。』
そう言って信長は、あさひの肩を引き寄せた。
『あさひの後ろ楯が我らだと言うことを忘れるな。』
謙信は、信長を睨むように見たあと、優しくあさひに視線を移し微笑んだ。
『皆、行くぞ。』
『伊達、また甘味頼むな。楽しみにしてる。』
『あぁ、しかたねぇな。』
『あさひ、またな。』
「ゆき、ありがとう。城下で会えたら声かけてよね!」
『あぁ。』
『それでは、また近いうちに。』
「うん、佐助くんもありがとう。またね!」
『忍び込むなら声かけろよ。』
『警備の隙を教えくださいね。』
『秀吉公、三成公、わかりました。また。』
『佐助!』
家康が佐助に小さな小瓶を放り投げる。
「なにそれ?家康。」
『さぁ?』