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暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第11章 愛でる想い、護る想い


『駄目だ、幸。甘味を食べに来たんだ。』

あさひの為に来たんじゃねぇんですか?』

「まぁまぁ、幸。せっかくだから、ね。」

『ふん、食べ過ぎないでくださいよ!』

『あぁ、幸。ありがとう。』

「ふふっ。」

『…? どうしたの?あさひ。』

「だって、家康。幸と信玄様の会話、秀吉さんと信長様みたいだから。」

『あぁ、まぁね。』

家康が、ふふっといたずらに微笑んだ。


『さぁ、出来たぞ!』

ずんだ餅、きなこ餅、よもぎ餅。

小さな一口大のそれはきれいに小皿に盛り付けられて、女中達が運び始めた。

『旨そうだな!』

『美味しそう。』

信玄とあさひの言葉を合図に皆が箸をすすめる。
あさひは、きなこ餅を食べながら、広間を見渡した。

小言を言い合いながら、仲良さそうな信玄と幸村。
固い絆の謙信と佐助。
離れた越後から駆け付けてくれた四人。
後ろ楯になってくれる有り難さ。
離れていても、敵将の正室になっても、変わらない気遣い。
あさひは、四人を見て眼を細めた。


少し離れた場所で、泣き上戸が落ち着いた秀吉。
きな粉を盛大に溢して慌てる三成。
ため息をつく家康。
家康の真っ赤なずんだ餅に小言を言う政宗。
そっと、茶に酒を混ぜる光秀。

他愛のない、いつもの光景に安堵して口元を緩める。

『あさひ、どうした? 何を呆けている?』

信長がそんなあさひを眺めながら、言葉をかけた。
広間の注目があさひに集まる。

「あ、え。うーん。
私にはもったいなくて。」

『もったいない?』

「はい、信長様。私がいた前の世では、皆様は有名な誰もが尊敬する武将です。
たまたま来ただけの何も知らない私を認めて、ここまで導いて頂いた。
信長様のお側にいることを認めてくれた。

それだけで、…もったいなくて、夢みたいだから。


…皆さん、助けて頂いてありがとうございました。」

ほろっと、涙が一筋流れ、あさひは頭を下げた。




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