第10章 愛される姫君
多勢に無勢。
圧倒的な勢いになす統べなく、大名の家臣達は捕縛された。
さほど将が指示を出すこともなく、家臣たちで納めるほど抵抗もなかった。
『皆、ご苦労。』
『御館様、お怪我は?』
『あるわけなかろう、見てなかったのか?』
『はっ、申し訳ありません…』
『心配性の右腕は大変だな。』
『ま、政宗!笑うな!』
『信長様、光秀様に使いを出します。』
『あぁ、三成。頼む。』
『家康、あさひは?』
『はっ、目立った怪我はなく、この中に…。!。』
家康が羽織を覗き驚いている。
『どうした? …?』
『寝てます。』
『はっ?』
『この状況で?』
政宗が家康の胸を除くと、少しだけ汗をかきながら寝息を立てるあさひが見えた。
『疲れたんだろ?』
苦笑いをしてあさひを秀吉が労う。
『家康、寄越せ。』
『はい。』
信長は、家康の胸からあさひを抱き寄せた。
『何も知らぬ、小娘のようだな。』
『謙信、それに惹かれたのではないのか?』
『はっ、貴様もであろうが。』
『天女のような眠りだな。早く目覚めて微笑んでもらいたいものだ。』
『はぁ、信玄様も謙信様も首突っ込みすぎですよ。』
『幸、いいだろう?後ろ楯なんだから。』
信玄が嬉しそうに微笑んだ。
『謙信様! 作戦は成功ですね!』
『あぁ、佐助。ご苦労だった。久々に楽しめたわ。』
『あさひさんも、無事で良かった…って寝てる!
はぁ。しかし…この面子! お一人ずつ握手とサインだな。』
『佐助。あんた、また何言ってるの?』
『おい、家康。今回は佐助の手柄もあるんだぞ?
信長様にあさひを取られたからっていじけるな。
いい役目だっただろ?』
『そんな役目、でしたよ。』
『さっ、帰るぞ。褥で休ませてやろう。』
『出た、兄様!』
『政宗!家康!』
『秀吉っ!』
『はっ。』
『謙信、信玄、幸村、佐助の部屋を用意しろ。』
『…は?』
『あさひの後ろ楯を返すわけにはいかぬだろう。
今日は泊まっていけ。酒を用意させる、宴だ。』
『なっ、しかし!城に入れるのですか?』
『信長様!秀吉様!』
『三成。』
『光秀様は、おりませんでした。
家臣達に後処理を任せ、酒を用意しに行ったと…』