第9章 秘密の合図
(み、みんな…。信長様。)
『この女に、このような! 何の価値がある!
しかも、上杉武田まで!
何だというのだ?』
『俺の許嫁に、価値など求めるな。阿呆か?』
信長が大名に向かって叫んだ。
『…貴様、知らぬのか?』
突然、謙信が話し始める。
信長もちらりと謙信を見た。
『貴様、あさひの後ろ楯を探っておったのだったな。後ろ楯は、見つかったか?』
『後ろ楯など微塵もない小娘だろ!』
『…はぁ。指先、足の先まで阿呆だな。
あさひの後ろ楯は、
…この上杉武田が勤めておる!』
『なっ…』
『織田に謀反を仕掛け、あさひに傷をつける、とするならば、友好協定で、あさひの後ろ楯の我らにも戦を仕掛けるということ。
知っててやりおったのだろう?』
謙信の言葉に、信長はにらりと口角を上げた。
後ろで控える織田勢は、謙信の言葉に驚きながら、見守っている。
『あさひ、眼を開けこちらを見よ。』
あさひは信長の指示通り、眼を向けた。
手を前に出し、OKの仕草をする。
(の、信長様?)
一度手を下げて、今度はまた手を前に出し仕草をした。
(大丈夫。大丈、夫?)
そして三回目の仕草をする。
(なんだろ? なにか、伝えてる?)
腕が下ろされた直後。
ドーン!!!
聞き慣れない爆発音と煙、キーンとした耳なりのような嫌な音がする。
『なんだ! うっ!』
大名が身を屈め、トンと背中が離れた。
『走れ!』
聞きなれた声があさひの耳に入る。
(佐助くん?)
あさひは、ふらつきながら、煙の中を掻き分けて走り始める。
すると、両腕を引かれ煙の中から外に出された。
『あさひ!』
『あさひ様!』
控えていた、秀吉、家康、政宗、三成があさひに駆け寄る。
家康が抱き止め、他三人が隠すように構えた。
『あさひ、怪我は?』
「目眩がまだ少し。あと、首が、痛いだけ。」
『家康、あさひを離すなよ。』
『秀吉さん、言われなくても。』
『大丈夫だ。俺たちが守るから!』
政宗の声と同時に、秀吉と三成が刀を抜いた。
ゆっくりと、煙が消える。
すると、そこは驚くべき光景だった。