第9章 秘密の合図
『佐助。』
謙信が低い声で話し始めた。
『信長はどこだ?』
『謙信様、信玄様。ゆき、お早いお着きで。
こちらです。』
『佐助、謙信様がおっ始めたら、俺とお前で止めるんだぞ?』
『あぁ、わかってる。』
天幕の中に、謙信が踏み入れた。
途端に名刀が抜き放たれた。
『の、信長様!』
『謙信、やるのか!』
秀吉、家康、政宗、三成が刀を抜きかけ、光秀は銃口を向ける。
『あぁ、やっぱり! 謙信様!やめてください!』
『あさひを助けるんでしょ!』
『こやつが阿呆だからだ。
言ったはずだ、あさひに何かあれば討ちにくると。』
『謙信…。
あさひの護衛に佐助をつけたこと、礼をいう。』
『!!』
『の、信長様!』
『織田軍総大将の御館様が、その様に頭を下げては!』
『佐助がいなければ、賊の居場所もすぐには割り出せなかっただろう。
あさひの為なら、なんだって負うつもりだ。
あれらは、直々に俺が裁く。』
『ふん、ではその後は、俺が拐っていく。』
『謙信様!』
『刀を納めよ、佐助と三成が策を聞き、早々に片をつける。』
『…ですってよ。謙信様!やめてください!』
『謙信、俺は天女を早く助けたいよ。』
『…佐助、策を話せ。』
謙信は信長を睨みながら、刀を鞘に戻した。
天幕の中では、佐助と三成が話し始めた。
『織田、上杉武田軍が小屋を囲みます。
そうすれば、おのずと奴等も気付くでしょう。
きっと、あさひ様をを人質にして逃げようとするはずです。
助けるには、そこしかありません。』
『あさひさんを人質にして、出て来た時に、俺のかんしゃく玉を使います。
改良したので、以前の三倍以上の威力があります。
その煙で相手を怯ませ、あさひさんを助けます。』
『私達、織田軍と上杉武田軍は威嚇と包囲を徹底し、万が一に備えます。
…以上です。』
『よし、三成、佐助。其で行く。』
『おい、信長。賊は俺にも斬らせろ。
友好協定の要は、あさひだ。
あさひに手を出せば、我らも黙っていないことを知らしめる。』
『あぁ、わかった。この事で互いの不協和音を一掃しようぞ。』
『かんしゃく玉を使う頃合いを決めたいのですが…』
三成が信長と謙信に視線を向けた。