第7章 分かち合う仕草
『…ー! …よし! 秀吉!』
『は、はい!』
信長の声が広間に響き渡り、返事をした秀吉の声は裏返っていた。
『そろそろ宴もたけなわだ。俺はあさひと天守に戻る。』
『あ、はい。今日は…そのまま?』
『いつもであろう。俺とあさひは天守で寝起きをしている。忘れたか?』
『い、いえ。失礼致しました。』
『皆、楽しみたいやつは楽しめ。今宵は無礼講。
俺も戯れが過ぎたわ。…な。あさひ。』
そう言うと、あさひの顎を掬い上げ軽く口付けをした。
おいっ!やりすぎだ!
光秀以外は、その光景を目を丸しながら見つめた。
大名や家臣達も同じことで、信長のそのような姿に度肝を抜かれていた。
『信長様は変わられたな。』
『あんなにも愛でているとは。』
『あぁ、寝起きも共にされているのか。』
しかし、それは良い方に転んでいくようで
呆れ返るような苦笑いを携えて、誰もがこれからあるだろう祝言に向けての献上品を考えていた。
『…腑抜けが。女に惑わされるような、あの様な御方であったとは。見余ったか。』
呟く一人を除いては…
そして、それを持ち前の読唇術で読み説いた光秀は、軽く口角を上げながら、杯に残る酒を飲みほした。。
『ちょ、三成。』
『はい。』
『鼻血… まだ続いてる。』
『刺激が強すぎたな。あの口付けは俺も慌てた。』
『三成、ちょっとだけ同情するから、部屋に来いよ。』
『はぁ、家康様!やはり、お優しいのですね!』
『やめろ、手を離せ。鼻血が付く。』
『いえ!手を握らせてください!』
『うるさい… ってか!お前、手拭い当てろよ!
流れてる!』
『はぁ…』
『手拭い血だらけ…。血を流しすぎて死ねばいいのに。』
『さぁ、宴は終わりか。』
『あぁ、何もせず部屋へ戻っていったぞ。』
『あ、見てなかった。』
『あぁ、途中からは、俺しか冷静ではなかったからな。』
『すいません…。』
家康、政宗、三成は当時に頭を下げた。
ポタっ。
『三成、手拭い…。』