• テキストサイズ

暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第1章 銘酒と銘菓


秀吉の小言を聞きながら、越後の菓子と政宗のずんだ餅を食べるあさひ。
あさひの部屋でくつろぐ、政宗と家康。
忍び込んだ通路と警備の話で盛り上がる三成と佐助。

いつの間にかあさひの部屋は、賑やかな話し声で溢れていた。


安土の空が夕暮れに傾く。
『…随分と楽しそうだが、何時までいるのだ?』

「み、光秀さん!…と、信長様?」

光秀の真後ろには、少しだけ怒りをはらんでいる信長がいた。

『天守に来ないからと探しに来てみれば、何をしておる。』

「あれ、もう天守に戻る時間?」

『佐助、いくらなんでも居すぎだぞ。』

若干くつろぎ始めていた秀吉が、信長の手前、慌てて声をあらげた。

「信長様、安土の銘酒を謙信様が気に入ってくれて…」

『光秀から聞いた。』

『み、光秀公にはかないませんね。何でもお見通しだ。』

『あさひの部屋だからと多目に見ていたが、そろそろ敵方の忍として関わる時間だ。』

『…そうですね。あまりにも楽しすぎて時間を忘れてしまいました。
続々と安土の名だたる武将が集まるあさひさんの部屋、ずっといたいくらいだけど。』

『おい!』

秀吉、家康、政宗が声を揃える。

『ふふ、あさひさんは幸せ者だね。』

「…そうだね。みんなが私の居場所を守ってくれるから。」

六武将があさひを優しく見つめる。

『じゃあ、あさひさん。これ。』

佐助があさひに小さな木箱を差し出した。
六武将全員が、その木箱に視線を送る。

『我が主君、上杉謙信様からあさひさんへの贈り物。大丈夫、変なものは入ってないから。』

「謙信様から? ウサギの飾りが可愛い木箱…。」

信長が無表情になり、武将達も表情が曇る。

『あ、みなさんが召し上がった菓子は信玄さまからの手土産です。』

『えっ?』

小皿から赤くなった越後の菓子を口に入れようとした家康が固まる。

『早く言えよ。敵将の手土産を茶菓子にしちまった。』

『でも、俺も政宗公のずんだ餅を茶菓子にしました。
美味しかったです。』

佐助は、政宗に頭を下げた。

「信玄様に、美味しかったってお礼伝えて。」

『うん。じゃあ、また来るね。』

『もう、来るな。』

「秀吉さん、私の友達なんだから!」

『はぁ、来るなら俺に一言言え。』





/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp