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暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第1章 銘酒と銘菓


『だが、あさひの部屋に忍び込む許可はしていない。』

『忍び込む許可なんて、忍がするわけないでしょ。』

はぁ、とため息をつき、呆れる家康。

『家康公、キレキレの突っ込み!恐れ入ります。』

『は? キレ? 何言ってんの?』

「まぁまぁ…、あ、それにね。越後のお菓子持ってきてくれたんだよ! お餅の中に栗餡が入って美味しいの。ほら、喧嘩しないで二人とも座って食べよう?」

あさひが座布団を二枚準備し、とんとん、と叩きながら話す。

『あさひ、安土城の銘菓も持ってきたぞ。』

開いた襖から紺色の羽織が見える。

「政宗!」

『ほら、ずんだ餅作った。佐助も食え。』

『政宗公のずんだ餅…』

「さ、佐助くん。…泣かないで食べよ。」

『あんた何しに来たの?』

『それより!佐助、勝手に忍び込むな。来るなら…』

『「来るなら?」』

『く、来るなら俺の部屋に寄って一言、言え…』

『は?それじゃ、認めてるってことじゃないですか。』

『佐助は、あさひの友達だからな。あさひの部屋なら俺は許す。』

「わぁ、政宗。ありがとう。」

『政宗!だめだ、佐助は上杉の右腕だぞ!』

「この部屋では、私の友達だよ。」

『…あさひ。俺は信長様の右腕としてなぁ。簡単に忍び込まれちゃ、まずいんだよ。』

『そうですよ、今日はどちらの道から入ったのですか?』

「み、三成くん!」

『城の警備、強化はしているんですが…、その上をゆく佐助殿。勉強になります。』

『誉めてどうすんだよ。まったく三成は…。』

家康は、小皿に盛られた政宗のずんだ餅を真っ赤にしていた。

「家康、やっぱりかけるんだね。」

『家康公、俺にもひと振り…』

『はぁ、また?』

「家康、佐助くんに…お願い。」

『はぁ、仕方ないな。』

ずんだ餅が赤く染まる。

感極まりながらずんだ餅を頬張る佐助に、三成が声をかけた。

『後程、どの道か教えていただきますよ。』

『あさひさん、三成公のエンジェルスマイルって怖いときあるね?』

「ふふふ。ほら、三成くんも座って越後のお菓子食べよう?」

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