• テキストサイズ

暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第6章 選ばれた理由


あさひか違和感を感じたのは、一人の大名が信長に挨拶し、自分に向きを変えたその時だった。

(シナモンみたいな匂いがする。)

家臣は、あさひがこの時代に来て間も無く傘下に入った者だった。手腕がよく、支城を任せられていた。

『あさひ様、この度はおめでとうございます。』

「ありがとうございます。」

『美しい打ち掛けですね。信長様がご用意を?』

「はい。有り難いことです。」

『お似合いです。』

最後の一言の後にあさひと視線を交えた。
眼が離せず、その視線は慶びとは別の何かを帯びていた。

家臣が隙無くその場を去った。

あさひが信長の方を見つめた。

『なんだ?』

「あの方… シナモン、桂皮の匂いがしました。」

『あぁ、何故だ?』

「え?」

『今まで来ていた家臣や大名たちは、貴様の名すら呼んでおらん。知らぬ者の方が多い。
しかし、あやつ…。あさひの名を呼んだな。』

すると、すぐに光秀が付け加えた。

『ええ、そしてかなり場に似使わない視線を、あさひに送っておりました。』

『じゃあ、あいつ?』

『監視しますか?』

『…いや、まだ泳がせる。皆、抜かるなよ。』

『はっ。』

小声でのやり取りに広間は、緊張感が広がった。
あさひの体にも力が入る。

『大丈夫だ。』

そう言ったのは秀吉で。

『甘味やらねぇぞ?』

『とちったら、唐辛子のかかった甘味にしてあげる。』

『私たちがついてますから。』

政宗と家康の後に話したのは、優しく笑う三成だった。

『あと少しだ。』

光秀が静かに話す。

『次だ。』

信長が、また来客を招き入れた。


/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp