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暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第5章 二ヶ所の広間


………

広間の主は静かにその二色の瞳を開く。

『して、佐助。あさひの容態は?』

『怪我はありません。間一髪でしたが。』

『あの阿呆は何をしておったのだ? あさひを危険に晒すなど。やはり、攻め混むしか…』

『それは、あさひさんが悲しみます。』

『黒幕の目星はたっているのか?』

『我らとの友好協定をよく思わん輩なんじゃないのか?』

隣で聞いていた、信玄が口を挟んだ。

『ふっ、であればすぐに収まるか。』

『佐助は、そのままあさひの周りで探れ。危険があれば出てもよい。』

『でも、斬られるかもしれませんよ?』

『城外でなら、ってことだろ?』

『であれば、あさひさんの守護をしながら裏を探ります。』

佐助は、謙信に頭を下げた。

『ところで、貴様は何をしに安土にいったかわかっているな?』

『え、あ、あさひさんと安土の探り…』

『…だけではないな?』

『銘酒ですか?』

『あるのだろう?』

『酒蔵との交渉はしてきました。』

『して、酒は?』

『…。』

『忘れたのか?』

『いや、…』

『斬るか。』

謙信がゆらりと立ち上がり、銘刀を鞘から抜く。
佐助も、すっと立ち上がった。

『あります。』

『謀ったか?』

『すみません。』

『どこにある?』

『刀をおさめていただけたら、お知らせします。』

『ならば、貴様を斬り探るまで。』

『蔵にあります。』

『なぜ、蔵に?』

『謙信様、部屋にまだ2本あるでしょう?』

『すぐになくなる。』

『もうすぐ、あさひさんのお披露目があります。
警備が厳しくなるので、それが落ち着いたら安土に戻りますよ。』

『俺の影としてあさひを守れよ。』

『じゃあ、…刀を下ろしてください。』

『いやと言ったら?』

どしどしと広間から謙信が出ると、佐助との鬼ごっこが始まった。



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