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暁の契りと桃色の在り処 ー香ー

第4章 献上品の罠


『あさひ様はお優しいですね。』

「みんなが…守ってくれるんでしょう?」

あさひが上座から全員を見渡した。

「安心だよ。こんなに強い人達いないもんね。
私も、シナモン…桂皮の匂いがしたりしたら気をつけるし、知らせるから。

だから、みんなは… 無理したり怪我しないでね。」

あさひは優しく笑いかける。

『こんな時まで周りを考えるなんて、呆れる。』

『あさひ、心配するなよ。大丈夫だ。』

『あぁ、俺達がついてる。』

「うん、信じてる。」

不自然に落ち着いて話すあさひの手は、小刻みに震え、そして震えを止めるように信長の手に力を入れていた。

(たいした女だ。誰よりも弱く怖いくせに、皆を気遣い強がるなど。)

信長はあさひの手を強く握り返した。
はっ、とあさひが信長の方を向く。
そして一瞬だけ表情を曇らせた。


『皆、よいか。必ずや此度の黒幕を暴く。
秀吉、献上品の確認を強化しろ。
三成、城の警備を強化だ。
政宗、今後のあさひの食事は貴様に任せる。
家康、あさひの喉を悪化させるな。
光秀、黒幕を暴け。

この事は城内に留める。黒幕が仕掛けてくるかもしれぬ。そこを突く。

あさひは、一人での外出を禁じる。
どうしてもというならば、必ず貴様ら誰かの護衛をつける。

よいな。
安土の姫はあさひ以外にはいないことを、肝に命じ…励め!』

『はっ!』

ぞくりとするほどの気迫に、あさひは圧倒された。
とんでもないことが起きた。
とんでもない人達に守られている。と改めて自覚するのだった。


軍議が終わり、持ち場へと戻る武将たちのは、いつも以上に気合いが入っていた。

『あさひがあんな風に話さなかったら、信長様は何を言い出すかわからなかったですね。』

家康が秀吉に向けて話す。

『あぁ、あさひは信長様を押さえてくれたようだったな。』

『あの娘は無意識なのかわざとなのか…。誰も傷つかずに事を納めるのが得意だな。』

『あいつが、俺達を信じてくれてるなら、必ず守ってやらなきゃな。』

『えぇ。必ず、です。』

五人の武将の結束は、より一層強まるのだった。





『あさひさんが狙われた…』
天井裏では、顔馴染みの一人の忍が呟き、気配を消すのだった。
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