第4章 献上品の罠
「すごい量だね!」
あさひのお披露目の式と宴の日取りが近づくある昼下がり。
あさひと秀吉は、城の一室で話をしていた。
『あぁ、御館様の正室お披露目の連絡をしたら、先に献上品が届いてな。まぁ、忠義の度合いにもなるから…
沢山届くのは仕方ないんだ。』
「これ、どうするの?」
『まずは、確認だな。』
「確認?」
『あぁ。危害がないか、確認。』
「危害って?」
『毒が塗っていないか、とかな。御館様やお前の命を狙って仕込む輩もいるからだ。』
後ろから光秀の冷たい声が聞こえた。
「光秀さん! …毒って。だってこれは味方からの物でしょう?」
『いや、あさひ。そうも言ってられないんだ。
上杉との友好協定に面白くない奴らもいる。
ここぞと、仕込んでくるかもしれないからな。』
『あさひ。秀吉が言うように、確認が終わっていない献上品の部屋で遊ぶのはやめるんだな。』
「あ、遊んでないし!」
『まぁ、一人で近寄るな。
確認が終わったら信長様とみんなで見ような。』
秀吉が優しく頭を撫で、ふっと光秀が笑う。
光秀は、その場を立ち去りながらあさひに声をかけた。
『姫、政治の指南の時間だぞ。
遅れたら、どうなるかはわかるな?』
「あ、光秀さん、待って!」
『遅れたらどうなるんだ?』
「あ、秀吉さん。指南が終わるとご褒美に政宗の甘味があるんだけど、お預けになっちゃうの!
だから、話してたのに、ごめんなさい!」
あさひは、早口で話すと光秀を追いかける。
しかし、急に、秀吉の方へ振り返ると優しく微笑んだ。
「献上品、綺麗なものばかりだから見るの楽しみ。
必ず誘ってね!」
『あぁ、わかった。早く行かないと甘味食べられないぞ?』
「あ、うん。行ってきます!」
『おう!』
秀吉は、あさひの後ろ姿を見送りながら優しく微笑んだ。